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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
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アフターコロナのオフィスの理想を考える

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オフィスのあり方や役割を見直すスタートアップ・ベンチャー企業が増えている。「cowcamo(カウカモ)」を運営するツクルバは、「時間や場所にとらわれず、それぞれが仕事に合わせて働く場を選択する働き方」に合わせ、オフィス床面積を45%縮小し、出社率を50%以下に抑える形でオフィスをリニューアルした。空間としても偶発的なコミュニケーションを生む場づくりやテレカンブースを設置し、今後のオフィスのスタンダートになるような仕掛けを施している。また、AI×HR TECHサービスを手掛けるLAPRASは、1年ほど前に引っ越したばかりの約430平米あるオフィスを解約し、全面テレワークに切り替え、実質オフィスを消滅させるそうだ。他にも、Sansanがオフィスの一部解約に踏み切る等、減床や解約をおこなう企業が続々登場している。

コロナ以前のスタートアップ・ベンチャーにとって、オフィスは採用の重要な役割だったり、社風そのものを体現する象徴的な存在であった。マンションの1室程度だった創業時からビジネスがスケールするたびにオフィスもスケールアップしていくのがひとつの物語であったし、SNSで〇〇社のオフィスにチェックインみたいな投稿も定番化しつつあった。それがいまや、オフィスに出社させることが前時代だと言われたり、単純にコストとしても割に合わないという風潮になりつつある。今、経営者にとってオフィスをどう扱うかは頭の抱える問題であろう。

一方で、オフィスにしかできないこともある。フェイストゥフェイスのコミュニケーションはもちろんなのだが、ブレストやワークショップなどがリモートだと活性化しにくいという声もよく耳にする。また、スタートアップ・ベンチャーではステージによっては月に何十人も入社することもあり、社内のカルチャーや理念浸透が薄まる要因にもなっている。リモートワークが長期化したことで、オフィスの重要性を再認識した人も多いのではないだろうか。事実、学情が20代の社会人におこなった調査によると、テレワークでの勤務を希望する人は74%いるのに対し、希望者の75.4%は週一回以上の出社を希望している。

今まで述べてきたことを踏まえると、今後のオフィスに必要な要素は大きく3つだと考える。ひとつは、「コミュニケーションが活性化すること」。イノベーションや斬新なアイデアを生むには、偶発的な交わりが不可欠だ。ふたつめは「自宅以上に集中できること」。特に家庭を持つ人にとっては切実な話ではないだろうか。最後のひとつは「未完成であること」。状況に応じてデスクの数が変えられたり、時には大会議室、時にはイベントスペースみたいに変更できるような柔軟性が望ましい。すなわち、これまでは“行かなくてはならない”場所であったオフィスを、“行きたい”場所にシフトさせていくことでもある。

今後、働き方はリモートとオフィスのハイブリットがスタンダードとなるのは明白である。この状況をポジティブ捉え、社員の心を掴む新しい形のオフィスに期待したい。

(佐々木智也)


参考文献:
・PR TIMES ツクルバ、ニューノーマルに対応した「それぞれが働く場を選択できる働き方」を開始!オフィスの意義を再定義してリニューアル(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000043247.html)2020.11.09
・ITmediaビジネス コロナ後もテレワーク、「オフィス消滅」企業が続々(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2005/25/news034.html)2020.05.25
・Re就活登録会員対象 20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(テレワークについて2) 2020年6月版(https://service.gakujo.ne.jp/data/survey/questionnaire202007-3)

 

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004
株式会社プレイド代表取締役
倉橋健太氏

LOGIC MAGAZINE4回インタビューは、オンライン上の人の動きを可視化するCXプラットフォーム「KARTE」を提供する株式会社プレイドの代表取締役・倉橋健太氏。同社が銀座SIXにある600坪のオフィスを移転したのは2018年のこと。その時点でメンバーは80名ほど。端からは持て余しているように思われていたが、この2年余りで200名規模の組織に成長し、むしろ手狭になってきた印象すらある。こうした変化を見据えてオフィスを設計した倉橋氏の思考法を探る。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

考えることからすべては生まれる。
その思想が根付いたいつまでも未完成なオフィス。

 

ー倉橋さんが今、夢中になっていることは何でしょうか?

倉橋健太氏(以下、倉橋):会社にいないときもずっと仕事のことを考えているんですよね。なかでも特に熱が篭るのは、0 から1を生み出そうとする瞬間。他の仕事では味わえないものがあります。時間の経過を異常に早く感じるとか。たとえば、今いる銀座のオフィスの内装を考えるときは、相当考えた記憶があって。ここには2018年に五反田から移転してきたんですけど、最初は自分たちがほしいものをとにかく詰め込む想定でいたんです。ラーメンで言う「全部入り」みたいな感じで、すごくリッチな設計でした。でも、資材を発注するタイミングでリセットすることにしたんです。

ーそれは何が問題だったんですか?

倉橋:言葉にできない小さな違和感を覚えて、話が進んでいくうちにそれが膨らんでいったというか。とはいえ、それを覆すのも精神的にもタフだから、このままでも大丈夫かなと思いながらやり過ごしていたんですけど、最後の最後でそれが言語化できたんです。

ー倉橋さんは、そういう小さな違和感を逃さないように普段から意識しているんですか?

倉橋:そうですね。問題が起きるときって、どんなことでも小さな違和感から生まれている気がするんですよ。しかも、夢中になっているときほどそのことに気づかない。だから、常に目的から問い直すことは心がけています。そうすると、良いこと・悪いことがクリアになるので。このときはオフィスをプロダクトとして捉えて、人が主役になるオフィスを作るにはどうすればいいのかを考えました。

プレイドの新オフィスと倉橋氏



人が考える余白があるうちは、
オフィスは完成しない。

ーその結果生まれたのが、このオフィスなんですね。倉橋さんは「完成しないオフィス」とおっしゃってますよね。

倉橋:オフィスって会社が成長すればするほど、経営陣と関わらなくなると思うんですよね。それはそれで良いと思うんですけど、僕はちょっと違うかなと考えていて。空間って無意識にすべての活動に影響するんですよね。それってつまり、オフィスで仕事をするときの暗黙のルールになっているわけじゃないですか。しかも、何年かそれに縛られることになる。だからこそ、今だけじゃなく、未来のことも考えて設計しないといけません。加えてスタートアップは、成長と変化の速度が尋常じゃないので、メンバーのポテンシャルを解放できるオフィスじゃないと意味がないと思うんですよ。

ー未来のことも考えて設計するというのは、人がある程度増えてもきちんと機能することを意識したのでしょうか?

倉橋:はい。事実、このオフィスに移転したときはメンバーは80人ほどだったのですが、今では200人ほどになりました。そして、この先さらに増えていく予定です。おそらく250人くらいにはなるはず。それだけでいろんなものが形成されていくわけですから、メンバーたちがオフィスの利用状況やニーズによって常に改善できる環境を作りたい。そこでオフィスのコンセプトとしてMVO(Minimum Viable Office)を掲げて、設備や造作を最小限に留めることにしたんです。そうしたら、テーブルと椅子が設置されただけのほぼスケルトンの空間になって。

ー移転直後のオフィスの写真をどこかで拝見したのですが、すごく衝撃的でした。

倉橋:会議室すらないですからね。でも、機能を増やすとそれだけ機能を減らすコストは上がっていくわけですが、何もない状態だとその心配がないんですよ。例えば、ここに置いてあるテーブルも邪魔だったら動かすだけで終わり。これが壁のあるミーティングルームだったら、そう簡単には変えられないですよね。だから、一定の不便さは大事なんだろうなと思うようになりました。

ー不便さを残したのはなぜでしょうか?

倉橋:人が考える余地が生まれるんです。ここでミーティングしたいけどテーブルがない。じゃあ、あっちから持って来ればいいじゃんって考えるんですよ。それができるかぎり、このオフィスは完成しないと思っています。

ー確かに完成されたオフィスだと安寧の地という印象があるのですが、こうした完成しないオフィスだと変化し続ける刺激が多く生まれそうです。

倉橋:実はメンバーが200人に増えたことでやや手狭になっていたのですが、新型コロナウイルスの影響でリモートワークをする社員が増えたことで、うまくやれば倍以上になってもやっていけるイメージが湧きました。

 

世の中にまだない価値を生み出すために、
あえて困難な道を選ぶ。

ー話を聞いていて、倉橋さん自身がこのオフィスで一番働きたかったんだろうなと思いました。

倉橋:仲介してくれた不動産屋さんとか、デザイナーさんに聞いてもらうと「尋常じゃないこだわりがある」って言うと思います。それに僕自身、いろんなところで仕事しますが、仕事の生産性はこのオフィスが一番高いですね。

ー倉橋さんが0から1を生み出し続ける原動力はなんでしょうか?

倉橋:世の中にまだない価値を生み続けていきたい気持ちが強いんでしょうね。スタートアップって収益化の構造を合理的に設定できて、合理的に伸ばしていける事業を行う会社がマジョリティだと思うんです。でも僕は、大変で誰もやりたがらないことの方が競合が少なくて勝ち筋があると考えていて。もしかしたら短期的な競合はたくさんいるかもしれないけど時間が経てば経つほど離脱していくし、先行する企業がいないからこそ常にダイナミックなことができるので競争上でも絶対に有利じゃないですか。

ーハードな方を選んだ方が結果として勝てる、と。

倉橋:そうですね。大変な方を選ぶと、その先に大きな違いが生まれることをこの会社で何度も経験しているので。それに最初にルールを作れる存在が一番強いですから。そういうポジションに常にいたいんですよね。

 

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倉橋健太さんの仕事のパフォーマンスアップのためのルーティーン

 

「朝のシャワー」

毎朝、起きたらシャワーを浴びるようにしています。そうすると頭の中が整理されて良いんです。

 

「仕事によって場所を変える」

思考と感情はリンクしていると考えていて、場所によって仕事の内容を変えるようにしています。すごく集中したいときはオフィス、作業をしたいときはカフェって。あと、六本木にある「アカデミーヒルズ」という会員制のライブラリーを使っているのですが、ここは起業したときによく利用していたので、漠然と何かを考えたいときに最適なんですよね。

 

「週に1度は何も予定をいれない」

僕のスケジュールは放っておくと勝手にどんどん埋まってしまうのですが、経営者が時間を確保できないと会社のバランスが崩れていくと思っているんですね。経営者って一番遠いところから事業を見ないといけないし、誰よりも全速力で走っていかないといけない存在じゃないですか。そのためには自分一人になれる時間を確保して、しっかり会社のことを考えないといけないと思うんです。だから、週に1日は終日予定を入れないと決めています。鋼の心で。

 

「サッカー」

24時間仕事のことばかり考えているのですが、唯一、欧州のサッカーリーグを観ているときだけは思考を停止しています。緑が目に優しいとか、面白いとか、いろいろ理由はあるんですけど、何より90分で終わるのが気分転換に最高なんですよね。ルーティンとして最適。妻もサッカーが好きなので、よく一緒に観ています。

 

倉橋健太さんおすすめのワークツール

「スポーツウェア」

スポーツウェアを着る比率が年々高まっています。特にNIKE。気づいたら着ていることが多いんですけど、動きやすさと着心地の良さを兼ね備えているのでストレスを感じる瞬間が少ないんですよね。

 

「iPad」

僕はキーボードを打つより手で書いた方が発想が残るタイプで、図式化してアイデアを膨らませることが多いんです。ただ、それを清書してしまうとその時点で発想が整理されて劣化していく感覚があるので、できるかぎりメモの状態で残しておきたいと考えています。その点、iPadはすごく便利。いつでも使えるし、keynoteやPowerPointにそのまま貼って資料化もできるので。全社ミーティングでモニターに繋いで書きながらみんなに説明することもあります。最近入った社員に「図形が多い会社ですね」と言われたのですが、それは完全に僕の影響です(笑)。

 

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編集後記

このマガジンが出る数日前にプレイドのマザーズ上場が承認されたというニュースが流れてきた。コロナという厳しい状況が続く中で、事業のみならず、新しい市場をつくるという困難な道のりを攻め続けた倉橋氏を始め、プレイドの皆さんには拍手を送りたい。おめでとうございます。

LOGIC代表・LOGIC MAGAZINE編集長 
佐々木 智也

(この記事は2020/11/17にNewsletterで配信したものです)

 

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