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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

Clubhouseは次代のコミニュケーションインフラとなるか、はたまたラジオ深夜便となるか。

ここ数日、『Clubhouse』というサービスが話題になっている。Clubhouseは音声版twitterとも言われ、自由にroomをつくり、仲間を呼んで会話を発信したり、人の話をリスナーとなって聞いたりすることもできる音声SNSプラットフォームである。一方で他のSNSとは違い、発信された会話に対して「いいね」だったりコメントを送ることはできず、アーカイブ機能もついておらず、後から聞くことはできない。また、配信をクローズドにすることができるので、音声チャットのように使うことも可能だ。

気になる今後の展開だが、1月下旬にシリーズBラウンドの資金調達(調達額は非公表)をおこなっており、調達資金でクリエイター支援をおこなうことを表明している。現段階では、スタートアップ界隈やネット感度の高い人がユーザー層の中心だが、ミュージシャンやエンフルエンサー、タレントなどが参入することでよりマスな層がどっと流入してくることが予想される。

実際に筆者も招待を受けて使用してみた。スピーカー・リスナー双方で使ってみた所感だが、例えて言うならば、公開収録ラジオの横丁といったところだ。特定の配信を聴きに行くというよりは、サッピングというか、いろいろ覗いてみて、気に入ったroomであれば聴き続けるような流れになる。また、スピーカーとして参加した場合は、あまり遠慮せずに出たり入ったりできるムードがあったりもする。とにかく、余計な気遣いや後ろめたさがないのが他のSNSと大きく違うところだ。

将来的には、主に同じ時間に複数の会場でおこなうようなイベントの形態、例えば、音楽フェスだったり、クラブだったり、ビジネスカンファレンスなんかが手軽にオンラインで行われるようになるのではないだろうか。それ以外にも、使い方のアイデアが無限に広がる。市民権を得れば、とんでもないプラットフォームになり得る一方で、IT業界の“ラジオ深夜便”としてとどまる可能性もある。いずれにしても、目が離せないサービスだ。(佐々木智也)

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。

008
foufou
マール・コウサカ氏

LOGIC MAGAZINE第8回インタビューは、「健康的な消費のために」をコンセプトに掲げるファッションブランド「foufou(フーフー)」のマール・コウサカ氏。SNSを駆使し、販売はオンラインのみ。にもかかわらず、多くの人がマール氏がデザインした服に魅了され、購入を希望する。まさに夢中にさせているわけだ。では、同ブランドの舵取り役であるマール氏は、日々どのようなことを考えいるのだろうか。その思考の一端を覗く。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上、中川)

 

夢中にならないことで見えてくる、
foufouというブランドの戦い方。

ーこのインタビューでは夢中をテーマに話を伺っているのですが、マールさんのご著書『すこやかな服』には“頑張らない”を大切にしていると書かれていますよね。そういう意味では、無理に意識を働かせる必要がないことが、マールさんにとっての夢中なのかなと思いました。

マール:「夢中ってなんだろう」って考えたときに真っ先に浮かんだのが、砂場とかで真剣になって遊んでいる子どもたちの姿だったんですよ。あれって側から見たら、全然楽しそうに見えないんですよね。でも、本人たちは時間も忘れて取り組んでいるわけじゃないですか。しかも、実際はすごく楽しんでいる。そういうところに夢中というものがある気がします。僕自身、ものをつくっている間は没頭しているので、その瞬間は何も考えていないんですけど。

ーそういうのって、後になってから気づくわけですよね。

マール:そうですね。でも一方で、僕は商売として服を売っているので、ものづくりにばかり意識を向けすぎてもいけないと思うわけです。だから、あえて夢中にならない、頑張らないように淡々とこなすことも意識していて。

ー常にフラットな状態でいたいということでしょうか?

マール:そうですね。うまくいってるときも、うまくいっていないときも、常に無の状態でいられるようにしています。どこかで俯瞰して物事を見ていたいというか。それに打ち込んでしまうと精神的に疲れてしまうんですよね。それによってどこかに皺寄せが来ることも嫌ですし。だから、なるべく集中しないようにもしていて。

ー集中しない?

マール:勉強もそうなんですけど、すごく時間をかけてやるタイプなんですね。でも、そういうなかでも常に思考は巡らせていて。それこそ、僕は生活のほぼすべてが仕事なので、考えていない時間の方が少ないというか。

ーどんなことを考えているんですか?

マール:いろんなことを考えていますよ。たとえば、先日すごく久しぶりに渋谷のライブハウスに行ったんです。その日は、オルタナとかシューゲイザー系のバンドが対バンをしていて、しかもけっこう人が入っていたんですね。そういうところから次の音楽シーンのムーヴメントが生まれる気がしたし、そのシーンにフィットする形でfoufouの服をつくったらどうなるんだろう、とアイデアを広げていました。

サプライズとハプニングは簡単にまねできない。

ーちなみに、マールさんはfoufouのアイデンティティは何だと考えていますか?

マール:ひとつは健康的な消費ができる洋服であること。次に僕がワクワクできる服であること。そして、仲間が湧くものであること。この3つを大切にしています。なかでも、いかに社内を沸かせられるかを最近は大事にしていて。たとえば新作のデザインを発表するときも、情報を小出しにしたり、気軽に相談したりしないようにしているんです。しかるべき場所、しかるべきタイミングで周知するようにして、そこで仲間から驚きの声が上がるかを評価の基準にしています。そのときの仲間の興奮は、お客さんにも絶対に伝わるので。

ーそれはブランドに関わる人が増えたからこその変化でもありますよね。

マール:そうですね。ただ、一人でやっていたときも、みんなとやっているときも、常にサプライズとハプニングは大切にしています。合理的に考えた要素って、トレースしようと思えばできてしまうんですよ。でも、サプライズとかハプニングって簡単にはマネできない。だから、当たり前にやっていたら生まれないものってすごく大事だと思います。それが結果として、ブランドの世界観にもつながっていくので。

時代をとらえないと、時代にとらわれないことはできない。

ーマールさんのやり方ってすごく時代をとらえていますよね。たとえば、ライブ配信をして服を紹介するとか、旗艦店を持たない代わりに自由に場所を移動しながら試着会を開催するとかも一例だと思うんです。一方で、foufouの服は不変的で、時代にとらわれていないじゃないですか。そのバランスはどのように取っているのでしょうか?

マール:まずは時代をとらえないと、時代にとらわれないことはできないと思うんですよね。だから、基本的にはすべてをフラットに見るようにしています。そうすると、こういう時代になっているんだろうなってことが自分なりにわかってくるので、そのうえでどういうポジションがあって、どうやったらカウンターが決まるのかを考えるようにしています。

ーご著書にも「自分たちはカウンターだ」と書かれていましたよね。カウンターを打ちたい気持ちがマールさんは強いのでしょうか?

マール:どちらかと言うと、王道で戦いたかったけど現実的に厳しかったから、今のやり方に辿り着いた感じですね。だから、「ディスラプターになりたい」とか「新しい価値観を築きたい」とか「スモールビジネスのままで展開したい」とかは全然思っていなくて。事業が伸びるんだったら伸ばしたいし、真ん中にいけるんだったらいきたい。それは僕自身の想いというより、foufouにそのポテンシャルがあるんだったらやりたいという心持ちでいます。

ーfoufouを知る人が増えていくことで、できることも広がっていく、と。

マール:はい。僕はそれをずっと繰り返していて。最初はハンドメイドで、撮影に力を入れることはできないし、サイズ展開もないし、さらには試着できる場所もありませんでした。そこから無理のない範囲で少しずつテコ入れをして今に至るのですが、まだまだ満足できるレベルではないので、これからもアップデートしていきたいと考えています。ただ、規模が大きくなると遠い存在のようになってしまうと考える方もいますよね。本当は逆で、規模が大きくなればfoufouの服と接点を持つ機会もどんどん増えていくので、関係性は近くなっていくんですよね。もしコロナの状況が改善されたら、試着会も再開して、全国どこでも飛び回りたいなと考えています。

ーなんだかバンドのサクセスストーリーみたいですね(笑)。

マール:それでいうと、foufouはものづくりの方法がバンドぽいと言われることも多くて。パタンナーさんとはもう3年も一緒にやっているんですけど、阿吽の呼吸で仕事ができていて。その方は僕よりふた回り歳上の方で、経験も豊富だから、はるかに引き出しが多いんですよ。僕がデザインしたものに対して「こういうのはどう?」っていう感覚でパタンナーさんなりの解釈が加わって服が仕上がってくるんですけど、自分が思いもしないようなものが届いたりするんですね。それがすごく楽しくて。

ーそれってコード進行だけのデモ音源を渡して、そこにベースラインをつけてもらう感覚に近いですよね。

マール:自分だけのこだわりだけで服をつくっていたら、おそらく行き詰まっていたと思うんです。だから最近は、こだわらなくてもいいこだわりをどれだけ捨てられるのかも大事だなと考えるようになりました。

ー現在はfoufouもマールさんだけのものではないという気持ちが強いのでしょうか?

マール:そうですね。ただ一方で、こだわらなくてもいいこだわりを捨てたからといってfoufouが何か変わるかと言われたら、それはないという絶対的な自信もあって。それは僕自身が関わっているからでもあるんですよね。

ーfoufouの今度についてすでに考えていることはあるのでしょうか?

マール:1年くらいは僕らにとってもしんどい時期が続く気がします。でも2〜3年後のことを考えると、わざわざこの服を着ていきたいと思えるような場所をつくっていくのが良いんじゃないかなって。服そのものだけじゃなくて、服を来ていく場所もつくる。それが今の時代にとってのカウンターになる気がします。

 

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マール・コウサカさんの仕事のパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「ドライブ」

日々をなるべく淡々と過ごしたいので、パフォーマンスが上下するのも怖くて。だから、これといったルーティンがあるわけではないんですけど、ドライブはよくしています。車を運転している最中って何も考えていないんですけど、瞬時にいろんな情報が目に入ってくるんですよね。道路の標識とか、人とか。それが禅の瞑想に近いとある人に言われてからなるほどと思い、それから心地よく感じるようになりました。たまに遠回りをして家に帰ることもあるのですが、そういうときに仕事のアイデアが思い浮かんだりするので、すごく大事な時間になっています。

 

マール・コウサカさんおすすめのワークツール

「レコード」

ものづくりの現場って、一緒に仕事をする人がどんなカルチャーに影響を受けてきたのかを知ることがすごく大事だと思うんですね。それがアウトプットに大きく関係してくるので。加えて、デザイナーはカルチャーの牽引者でなければいけないと個人的に思っていて、さまざまな知識を深めていくのも仕事のひとつだと考えています。そこで事務所にレコードを置くようにしました。最近は僕だけじゃなく、いろんな人がレコードを持ってくるのですが、「これ、誰が持ってきたの?」というひと言からいろんな会話が生まれています。ヒップホップが好きな人がいれば、2次元が好きな人もいる。そうやって相手の人となりを知りながら、僕自身も知識を深めることができて、すごく楽しいです。

 

LOGIC | CULTURE

本号から新連載!教養としてのアート入門、スタート。


「アートのロジック」第1回

『バウハウス』

知ってるようで知らないアートを読み解く連載「アートのロジック」。第1回は、私たちの身近なデザインに今も生き続ける「バウハウス」について紹介します。

バウハウスは、第一世界大戦に敗れて疲弊したドイツのヴァイマールに、1919年に開校した造形学校です。

18世紀半ばに起きた産業革命以後、ものづくりの世界では、機械の大量生産による製品の質の低下に対し、いかに美的なものを守るのかという問題が長らく議論されてきました。そうしたなか、「産業と芸術の新たな融合」を目指した同校では、デザイン、美術、工芸、建築などを総合する革新的な造形教育が行われ、後世に多大な影響を与えました。

初代校長は、ル・コルビュジエらと並ぶ近代建築の巨匠ヴァルター・グロピウス。バウハウスの教育理念は、彼が創設宣言書に書いた「すべての造形活動の最終目標は建築である!」という一文によく表れています。そもそもバウハウスとは、「建築の家」の意。この名称を体現するように、その教育過程の中心には建築が置かれました。

入学した生徒はまず、固定概念から抜け出して、自らの感性で素材や造形を捉えることを教える予備過程(基礎教育)で半年間学びます。その後、金属、木工、家具などの工房で技術を習得。そして、最終の建築過程へと進みます。マイスター(親方)と呼ばれた教師陣の顔ぶれも豪華で、画家のカンディンスキーやクレー、写真家のモホリ=ナジら、近代芸術に欠かせない面々が招聘されました。理論家のヨハネス・イッテンが手がけた、具体的な制作より先に感性や個性を伸ばす予備過程はなかでも先進的で、現代のデザイン教育の礎になりました。

1925年にバウハウスはデッサウへ移転します。その際、グロピウスが設計した新校舎は、同校の美学を象徴する建物になりました。壁全体がガラスのカーテンウォールに覆われた開放的なデザインは、のちに世界中に溢れる、直線的なビルが立ち並ぶ都市景観の重要な源流に。また、建物内に置かれたマルセル・ブロイヤーのスチールパイプ椅子などは現在も人気の製品で、オフィスなどで見かけたことのある方も多いでしょう。ほかにも同校で非常勤講師を務めたパウル・レナーによる書体「Futura」が、のちにルイ・ヴィトンやフォルクスワーゲンのロゴに使用されるなど、バウハウスに関わるデザインはいまも私たちのすぐ身近にあります。

モダンデザインに大きなインパクトを与えたバウハウスですが、その学校としての歴史は短命でした。1933年、同校は台頭したナチスの弾圧を受け、開校からわずか14年で閉校に追い込まれます。しかし、アメリカに亡命した教師たちや、日本人を含めバウハウスで学んだり影響を受けた表現者の手によって、その造形精神は後世に引き継がれていきます。

立場や階級に関わらず、多くの人が手に入れやすい大量生産品を通じて、生活環境を豊かにする——。このバウハウスの理念は、世界のモノの風景を変えました。もしもあなたがシンプルで機能的な、いわゆる「モダン」なデザインのプロダクトや建築が好きなら、その背景には、きっとこの学校が残した精神が宿っているはずです。

(ライター:杉原環樹)


(この記事は2021/1/28にNewsletterで配信したものです)

 

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