LOGIC MAGAZINE Vol.03

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

日本にもいよいよサステナビリティが根付くのか

近年、日本にもサステナビティやエシカルの風が吹きはじめている。背景としては、世界的に環境問題への対応が厳格化されたり、海洋プラスチックごみの問題が深刻だったりと列挙に暇がないが、今年7月からレジ袋有料化が施行されたことを始め、自治体や民間企業でも様々な取り組みが始まっている。

ユニークな取り組みとしてまず挙げたいのが、米テラサイクル社が運営する、消費財の容器回収・再利用をおこなう「ループ(LOOP)」という循環型ショッピングプラットフォーム。ループはステンレス等で繰り返し使える容器を製造し、その容器に各企業の商品を充填し、商品の配送と回収、容器の洗浄までをおこなうという仕組みになっていて、すでにサントリーや資生堂、イオンなど国内大手13社が参画を表明しており、今秋から東京都で試験運用される予定だ。

さらに、企業独自の取り組みも活発になってきている。 今年の9月にリブランディングしたコーセーの主力ブランド「雪肌精」が、容器にバイオマスPETを採用、外装箱もダンボールに一新した。またNIKEも「Space Hippie(スペース ヒッピー)」という工場の廃材を利用したコレクションラインを発表、廃材ならではのユニークなスタイリングで話題を読んでいる。また、アサヒ飲料やサントリーがペットボトル飲料をラベルレスの採用したり、セブンイレブンが賞味期限が迫った商品を購入するとnanacoポイントを還元するような事例もある。

環境問題が顕在化した高度経済成長期以降、かつて日本にサステナビリティの風が吹いたことが何度かあった。そのなかでとりわけ大きなムーブメントとしては、90年代半ば〜2005年あたりに本格化したECOブーム(あえてそう呼ばせてもらう)であろう。結果として、ECOブームはトレンド・ビジネスチャンスとして消費されて終わったと言わざるを得ない。大手企業がこぞってECO関連のプロジェクトを立ち上げ、ECOを謳う商品が巷に溢れた。当時から今でも取り組みを継続する良心的な企業も存在するが、肝心の消費者レベルに根付くことは実現できなかった。

一方で、今回の流れがECOブームのそれと大きく違う点がある。
それは、ライフスタイルや消費の価値観として、それが「クール」だと考えられるようになってきたことである。ECOブームのときは、どこか”慈善”というか、関わること=良いおこない的な印象が強いきらいがあり、おこない自体に憧れやステイタス性が介在していなかった。

今の流れは、世界中のセレブリティやインフルエンサーだったり、米ポートランドのような市民レベルでの動き、新興のD2Cブランドなど、積極的にサステナビティやエシカルに関心を持ったり取り入れていることが大きいと思われる。また、金融や投資の世界では環境にどこまで配慮しているかどうかも、評価の対象になってきている。

日本国内でも、いよいよ「よいおこない」というフェーズから脱却し、これからのスタンダードになっていくことは避けられないであろう。これだけユニークなプロダクトや取り組みが出てきている今、やるべきことがいかにそれを“楽しむ”か、ではないだろうか。


参考文献:
・SUSTAINABLE BRANDS - テラサイクルの容器再利用事業Loopに13社が参画、来年秋から東京で試験運用(https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1195100_1501.html)2019.12.11
・FASHIONSNAP.COM - NIKE、廃材をリサイクルして作った新作シューズを発売(https://www.fashionsnap.com/article/2020-02-06/nike-spacehippie/)2020.08.18
・WWD JAPAN - 「雪肌精」が「SEKKISEI」へ 35周年で初のリブランディング(https://www.wwdjapan.com/articles/1091104)2020.06.26
・検証:「エコブーム」の終焉 竹内恒夫 (分散型エネルギー新聞 2014.10.5連載)

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。

 


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FABRIC TOKYO 代表取締役CEO
森 雄一郎氏

LOGIC MAGAZINE第3回インタビューは、 オーダーメイドスーツなどをD2Cブランドとして提供するFABRIC TOKYOの代表取締役CEO・森雄一郎氏。インクルーシブなジャケットスタイルを提供したり、3Dスキャンで採寸するジーンズ「STAMP」を展開したりと様々な挑戦を続ける森氏が今取り組んでいることや仕事観について伺ってきた。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集長 佐々木)

 

マネジメントの時間をいかに減らして、
プロダクトにコミットするか。

 

ーFABRIC TOKYOのめまぐるしい成長や変化の最中、代表である森さんが一番優先して取り組んでいることは何でしょうか?

森雄一郎氏(以下 森):一番はプロダクトです。なんでプロダクトかっていうと、今コロナの影響でアパレルの在り方の再確認が必要ってフェーズだと思っていて、多く人のライフスタイルが変わったり、外出自粛やリモートワークのような状況がいつ終わるかわからないし、そもそも終わるのかも分からない。そういった中、僕らはプロダクトの提供価値をデイリー・ウィークリーレベルで再検証していく必要があると考えていて、特に今年は「サービスプロダクトが顧客にどういう提供価値を持っているのか」みたいな部分をいかに早く正解にたどり着かせるかにすごく注力してします。なので基本的に100%プロダクトですね。

プロダクトのなかでも、サービスの大枠的なことから、パターンとか生地みたいな細かいことも両方注力していています。これまでほとんど任せてたんですが、今は意思決定にもかなり入ります。ただ、入り方としては、上げてこい的な流れではなく、ちょっと話を聞かせてとか提案を聞かせてとかグッと自分から現場にいって聞きに行ってる感じです。なので、この半年間は店舗の社員とか商品企画の社員とかマーケティングチームとか(オンラインのサービスとしての)プロダクトチーム、そして店舗スタッフのコミュニケーション量が増えましたね。

やはりアパレルはコロナの影響で一番在り方自体が変わりそうなカテゴリの一つですし、実際変わってきてるんですよね。一方で、リモートだろうがオフラインだろうが、個人の仕事のモチベーションや相手にどう印象を与えたいっていう意識は基本的には同じで、ガチガチに着こなすスーツスタイルから少しカジュアルになっている傾向であるにせよ、見える部分への気遣いは変わらないということです。実際うちも売れる商品が、去年まではスーツ系が多かったんだけど、徐々にカジュアル系のジャケットやパンツだったりとかカジュアル系のシャツ、Tシャツだとかどんどん変わってきています。

ープロダクトに注力している一方でマネジメントはどうしているのでしょうか?

森:マネジメントには時間を使わないようにしています。そもそも人を人が管理・マネジメントするっていうのはおこがましいと思ってますし、マネジメントされないと動けない人間っていうのは基本的に採用したくないので、僕はマネジメントに時間は割かないと社内で明言しています。逆にマネジメントの時間を減らすため採用を頑張ってます。

それぞれのマネージャーや役職者のメンバーたちがしっかりミッションとユニークなスキルを持ってると思っていますし、それを生かして働いてもらっていますね。ある程度三角形のような組織図にはなっているんですが、上下関係はなく役割っていうだけで、それぞれの意思決定とか動きとかは割と自由になっています。なので「ここ通さないとこの承認得られない」ようなことは基本的にないようにしてますし、僕が決めないと進まないといったことは、きわめて少ないようにしていて、どんどん現場レベルマネージャーのレイヤーで決まっていくことが多いかなと思います。

 

カルチャーフィットよりミッションフィット

ーさきほど採用の話がでましたが、採用で特に重要視してることって何ですか?

森:採用の時はミッションフィット(応募者と会社が掲げるミッションとのフィット度合い)というものをすごく僕は聞いていて、面接中はひたすらそれしか聞かないんです。ベンチャー企業が次々と生まれ、魅力的な会社がたくさんある中であえてうちの会社を選ぶのは本当に必要なことなのか、その人にとってどんな意味があることなのかっていうのはすごく聞くようにしてして、よくカルチャーフィットとか言われますけど、それよりもミッションフィットみたいな所を僕は大事にしたいと思っています。

カルチャーフィットっていうのは、一緒に働きやすい人を採用するっていうことだと思うんですが、必ずしも目指している方向性が一緒かっていうとちょっと違うかと思っています。だからうちの会社はカルチャーとのフィットよりも僕らが掲げるミッションとのフィットみたいなところをすごい重要視していますね。

 

FABRIC TOKYOのビジョンとミッション


ーミッションフィットと聞いてとまどう人もいたりますか?

森:そうですね。特に大企業で働いてる社員さんは、自分の会社のビジョンとかミッションを把握している人も少なくて。あるのかないのかも結構曖昧だったりします。しかも、経営理念みたいなものがウェブサイトに書いてありますけど、例えば「お客さん第一の会社」のようなこと書いてあったりすけど、どの会社で掲げても同じようなことじゃないですか。それが大企業たる所以なのかもしれないですけど、僕たちはベンチャー企業でスタートアップなので、世の中のまだ解決されていない悩みとかまだ満たされていないニーズに対して新しい価値提供を通じて事業を伸ばしていくっていうことが使命なので、きわめてユニークでないといけないんですよね。ビジョンミッションもユニークだし、事業もユニークだし、ということは入社時にそのユニークさをしっかり持てている、共感できている、まあ共感だけじゃ多分だめで、体現できている社員かどうかってのはすごく見させてもらってますね。

 

どんなTPOにも多用できる
新しい洋服のカテゴリーが生みだす。

ーそんななか「STAMP」っていうユニークなプロダクトが誕生しました。今後の展望も含めて聞かせてください。

森:これまでのジーンズ観って、履けば履くほど色落ちして味が出てくる、自分仕様になっていくっていうのが特徴だし良さだったりしたわけじゃないですか。一方で、ビジネスシーンだと色落ちとかしちゃうとちょっと使いづらくなってくるってのはあって…例えば、めちゃめちゃ色落ちしてたりとかダメージ入ってるジーンズってクライアントの前に着て行きづらかったりしますよね。
なので、そこを解決するために色落ちしない素材を作りました。そして、色落ちしないデニムを使ってビジネスシーンでもプライベートでも両方使える、すなわち、週7日使えるような想いを込めて「STAMP」をリリースしました。

ファッションってどこまでいってもTPOだと思うんですが、これから来年再来年とどういうTPOが出てくるのかまだ曖昧だったりします。なので「STAMP」はわりとその真ん中を攻めているって感じはしますよね。どこに行っても対応できるみたいな。最近はこんまりさんとかミニマリスト的な考え方、いわゆる断捨離的な考えを持つ方も増えてきているので、TPOに合わせてモノをたくさん持つというより、どんなTPOにも多用できるモノを提供できたら助かる人が多いのかなっていう感覚でやってますね。

リモートワークという新しい選択肢が増えてきましたが、オフィスで働くってことは一生なくならないと思っています。今後はそんな環境に適した、新しい洋服のカテゴリーが生まれると考えています。オフィスでも、リモートワークでも、さらに週末とかのカジュアルなシーンでもシームレスに快適な洋服。今はそれぞれが分断されているので、そこがどんどんグラデーション的に交わってきてそれで新たなファッションカテゴリになっていくと考えていてますし、僕らはそこに挑戦していきます。

 

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森雄一郎さんの仕事のパフォーマンスアップのためのルーティーン

「情報発信」

情報発信ですね。今はtwitterとか、noteを書いたりとか。いままではブログで今年からnote始めたんですけど、すごい使いやすくて評判通りいいなと思って。それ以来noteを使ってます。あとはstand.fmっていう音声アプリも使っていて、この辺をほぼ毎日のように更新しているって感じですね。

アウトプットをずっとやり続ける人生で居たいなってのは実は10代のころからあって、小学校時代に転校生ということでいじめられた経験があったんですが、自分を変えてくれたのがインターネットだったんですよ。父親が大手電機メーカーで働いていたのでパソコンに早いうちから触れる機会があり、その時期からサイト制作とか当時のbbsとか、自分の日記を書いたりするっていうコーナーを作って発信していくうちに、顔も名前も本名を知らない人たちが見て喜んでくれて、自分の居場所を見つけて。そういう救われ方したんですよね。それから大学時代もファッション好きになって、ファッションのブロガーをやっていました。で、情報発信して新しい人たちも会えたし、自分の人生の可能性が広がって今につながってるなっていう。なんかそういった原体験があって。なので、今も昔もアウトプットは継続していこうかなっていう風に思ってますね。

これは僕の持論なんですけど、本読んだりとか勉強会行ったりとかなんらかのインプットしろっていう人が多いじゃないですか。僕は逆にアウトプットしろって思ってる派で、何か発信したいことがあっても発信できない自分に気づいたときに「あ、学びが足りないな」と思ってインプットするんですよね。周りの経営者と話していても、何か発信するといった際にいろいろ調べものしたりヒアリングしたりする人が多くて、それを徹底している人が成長するスタートアップ作れてるなっていう印象があります。なので、インプットファーストじゃなくてアウトプットファーストって考え方のほうが個人的にはいいと思っています。

また、会社が大きくなってだんだん現場離れていくと、肌感よりも数字で判断みたいなっていく傾向があって、もちろん数字の判断も大事なんですけど肌感を失うと経営のかじ取りが危うくなっていくと個人的に思っています。だったら自分でtwitterやnoteやstand.fmを通じて、消費者の反応するネタだったり、コンテンツ内容だったりとか、どういう流れでここにたどり着いてどういう流れでそのコンテンツを読んでくれてどういう流れでフォローしてくれるのかとか、そういうことを追い続けたり、tiktokなんかの新しいプラットフォームを自ら実践してみたりして、肌感を忘れないように心がけています。やはりそのへんの理解というのは、ブランドオーナーであり、組織のトップである僕がしとかないといけないと思いますし、アウトプットを通じて、市場が今どのように動いているか、どういう感覚をもっているか、みたいなことは常に把握するようにしています。

 

森雄一郎さんおすすめのワークツール

「KOREDAKE」

ウェルネス系プロテインブランドなんですけど、完全栄養で味もすごくおいしいです。完全栄養って問題点としてはおいしくないっていうのがあるかと思います。KOREDAKEはミルクティー味なんですが、無調整豆乳とかで割って飲むとすごくおいしく飲めます。平日の昼、ランチ会食とか入ってない日はこれかスムージーを昼ごはんにしています。これだと、最近よく言われている血糖値爆発みたいなものが起きないんですよね。午後も眠くならないし、疲労も蓄積しづらくなって、あとは太りにくい。という風になるので個人的にはまっています。そして、パッケージデザインも洗練されていてお洒落ですね。従来のプロテインってわりとパッケージが派手だったり強すぎる感じがあるので、あんまりキッチンとかの棚に置いときたくないなと。大体月に1個買うくらいの感じのイメージです。

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編集後記
アフターコロナで、特に在り方が変わるであろうアパレル。業界としてのアパレルは、大手を中心に撤退や縮小などの暗いニュースが続いている。その一方で森さんの話からはアパレルに明るい未来を感じることができた。これからどんなニューノーマルなプロダクトが生まれてくるのか、楽しみに見守っていきたい。

LOGIC代表・LOGIC MAGAZINE編集長 
佐々木 智也

(この記事は2020/10/22にNewsletterで配信したものです)

 

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