LOGIC MAGAZINE Vol.07

LOGIC MAGAZINE Vol.07

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

年始のご挨拶

少し遅めのご挨拶となりましたが、新年あけましておめでとうございます。本年もLOGICとLOGIC MAGAZINEをよろしくお願いいたします。

新年ということで少しだけLOGICを話をさせてください。

LOGICは昨年6月にクラウドファンディングを経て、8月に発売を開始しました。以来、爆発的ヒット…とはいきませんが、経済紙からファッション誌まで、様々なメディアにご紹介いただいたり、HOTEL SHE,や黄金湯などのコラボレーション、年末にはVOCE主催のメンズコスメアワードで新人賞をいただくことができました。

これもひとえに、LOGICを応援してくださったり、共感してくださったり、すこしでも興味をもってくださった皆さまの声の積み重ねで掴んだチャンスに他なりません。心から御礼申し上げます。

2021年ですが、まずは今週にミニサイズのトライアル(トラベル)セットの発売開始、主要都市での店舗販売の開始、さらには来月上旬にLOGIC初のPOPUPショップの実施、そして、いよいよLOGIC次回バーションの開発をおこなっていく予定です。詳細は、随時リリース等で発表しますので、ぜひ、ご期待ください。

今年も社会的には不安定な状況が続きますが、LOGICのプロダクトや様々なアクティビティ通じて、一人でも多くの皆様に喜びを提供し、お役に立てるよう精進して参りますので、引き続きご愛顧の程宜しくお願い申し上げます。

LOGIC 代表 佐々木智也

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。

007
Nature代表取締役
塩出晴海氏

LOGIC MAGAZINE第7回インタビューは、「自然との共生をテクノロジーでドライブする」というミッションを掲げて躍進中のNature株式会社の塩出晴海氏。同社が手がけるスマートリモコン「Nature Remo」シリーズは、世界中で累計販売台数20万台以上を誇る。「このデバイスを梃子にして電力事業に取り組みたい」と塩出氏。その想いの根底には、何があるのだろうか。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

将来的な電力革命を仕掛けるために。
20年の準備期間を経てはじまった自分の人生

ーそもそも塩出さんはなぜ起業しようと考えたのでしょうか?

塩出:僕の人生は「自由」と「創造」がテーマになってるんですけど、それをいかんなく発揮できるのが起業家だと思ったんですね。ただ、環境が違ったらまったく違うことをやっていた可能性もあります。実際、画家や映画監督になりたいと考えていた時期もありますし。結局はものづくりが好きなんですよね。

ーどうして起業家の道を?

塩出:それは父の影響が大きいです。父は高卒なんですけど、コンピュータやハードウェアのことをゼロから勉強し、その後に起業してプレイステーションのソフトを開発していました。当時の少年たちにとって、もうど真ん中にあるものなわけじゃないですか。そのゲームを父親がつくっていることがすごく誇らしくて。

ーまさにプレイステーションは世界を一変させるエポックメイキングなハードでしたよね。そのソフトを身近な人間がつくっているのを間近で見て、塩出さんも世界を変えるものをつくりたいと考えたんでしょうね。

塩出:そうですね。10歳の頃には起業しようと決めて、その後はすべてのことが準備期間だと思って過ごしていました。大学生の頃に留学したのも、就職先として商社を選んだのも、日本だけのマーケットだけではなくて、グローバルで戦うために経験を積む必要があると思ったからで。

ー塩出さんがNatureを創業したのは2014年でしたよね。そうすると、約20年も準備期間に充てていたと。人によっては途中で進む道を変えることもあると気がするのですが、どうして気持ちを維持できたのでしょうか?

塩出:やっぱり目の前で熱量を持って事業に取り組んでいる姿が目に焼きついていたからでしょうね。まあ、もし人生をやり直せるなら、もう少し早いタイミングで起業しますけど(笑)。でも、20年を準備に費やしたことで、物事をより長期的な視点で見てきたと思うんですよね。

世界観を語り、仲間の力を引き出すものづくり

ー起業してから理想と現実のギャップを感じることはありませんでしたか?

塩出:それでいうと、違うことだらけですね。会社を立ち上げてしばらくは、人手もお金も足りなかったから、いろんなことを自分でやらないといけなかったのでとても大変でした。途中、倒産するかもと思ったことも何度かありますし(笑)。

ースタートアップあるあるですね。

塩出:一方で会社の成長を考えると、人に任せないといけなくなるフェーズもあるわけです。あるとき、尊敬している先輩の起業家に「塩出は(起業家としては悪い意味で)何でもできる」と言われたことがあって。その意味についてしばらく考えたんですけど、要はいろいろやりすぎた結果、エッジがなくなってきたということなんですよね。小さい頃の自分を思い出すと、めちゃくちゃ尖っていたなと(笑)。

ーいろんなことができるのは強みのように思えますが、違うんですね。

塩出:僕は最近スポーツによく置き換えて考えるんですけど、能力値が平均的なチームって実はそんなに強くないと思うんですよ。それよりも、守りが堅牢だとか、攻めに特化しているとか、尖っているチームの方が結果を出せると思うんです。それで自分の得意・不得意について考えるようになりました。

ー結局のところ、社長も組織のなかの役割のひとつでしかないということですよね。とはいえ、自分の仕事をいきなり任せてしまうのは、すごく勇気がいる気がします。

塩出:それは抵抗がなくて。たとえば、これが音楽をつくる現場だとしたら、僕に向いているのって世界観を考えて、それぞれの分野のプロフェッショナルと一緒に形にしていくプロデューサーだと思うんですよ。

ープレイヤーではない、と。

塩出:全体の世界観を考えるのが楽しいし、それをつくり上げていくためにデザイナーやエンジニアと話をしながら、ときに彼らの良さを引き出して、自分一人ではつくれないものを完成させていく過程にワクワクします。プロダクトをつくる会社の代表って、そういうことを求められていると思うんですよね。

「自由」と「創造」を大切にしたい

ーあらためて、塩出さんの活動の原動力になっているものは何なのでしょうか?

塩出:やっぱり「自由」と「創造」に行く着く気がします。生きていれば、どこかで何かしらの問題に直面しますが。それを乗り越えていくためには頭を使って考えないといけないし、その後のアクションで生き方が決まるんじゃないかなって。

ーそれは事業も同じですよね。別に問題になっていないことだったら、事業にしていないというか。塩出さんが「Nature Remo」シリーズを手掛けている理由もそこにある気がしますが、どうしてこのプロダクトを開発しようと考えたのでしょうか?

塩出:20年もの歳月をかけて準備してきたわけだから、人生のすべてをコミットして取り組めることをやりたかったんです。それで軸にしたのが、まず自分の感性に響くもの。次に考えたのが、やるからにはインパクトの大きなものにしたいと考えました。そのためにはどんな波に乗るかが重要で。たとえば、それが東京湾だと10mクラスの波なんて発生しないわけですよ。

ーでかい波に乗るためには大海原に出ないといけない、と。だからこそ、クリーンエネルギーへのシフトという大きな課題に取り組んでいるわけですね。

塩出:将来的には電力革命を仕掛けるような事業に繋げたいと考えていて、その一歩として「Nature Remo」シリーズがあるイメージでいます。今はとにかくデバイスを普及させるというフェーズで、いかに良い体験をユーザーに提供できるかにフォーカスして事業を進めているのですが、2021年はNatureにしかできないようなさらに尖った製品・サービスもリリースする予定です。

ー今後が楽しみですね。

塩出:そうですね。僕としては20年の準備期間を経て、ようやく自分の歩みたかった人生がはじまった感覚なので、これからもっとNatureというブランドを築いていきながら、自分自身も起業家として成長していきたいと思っています。

 

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塩出晴海さんの仕事のパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「サウナ」

僕にとってメディケーションになっているのが、週2回のサウナの時間。もともと父親がサウナ好きで、小学生の頃から毎週連れられて見よう見まねで入り方を学びました。まずはサウナ室で12分、その後に水風呂で3〜5分のルーティンを3回繰り返すと大体1時間くらいになるんですね。その時間は他に何もしないというかできないんですが、そうするといろんなことを閃きます。『イノベーションのジレンマ』の著者であるハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授が、授業で1週間のうち1回以上は内省する時間を取ることが大事だと言っていたのですが、まさにサウナが自分にとってそれなんですよね。

「散髪」

今でこそ仕事があるのである程度清潔感のあるヘアスタイルに落ち着いてしまってますが、かつてはアフロにしたり、ドレッドにしたり、金髪にしたりとかなり髪型で遊んでいました。今でもこの人だと決めた美容師さんがいて、もう10年以上彼に髪を切ってもらっています。そういう経験から学んだのですが、感性の合う美容師さんにこんな感じというイメージだけ伝えてお任せするのがいちばん仕上がりがいいんですよね。細かい指示を出さないといけない美容師さんだと結局うまくいかない。これは仕事でも共通すると思っていて。クリエイターさんに仕事をお願いするときも、こちらの世界観だけ伝えて、あとは思い切ってお任せしないと相手の個性が死んでしまうので、誰に仕事をお願いするかとうところを徹底的に拘るようにしています。

 

塩出晴海さんおすすめのワークツール

「メモアプリ」

僕の仕事に関する着想やアイデアは、仕事をしていない時間に思いつくことが多いんです。なので、思いついたことや感じたことをすぐにメモアプリでメモするようにしてます。本当に休日に1日何度も使うし、ご飯食べてる時に「あ!」と思いついたりすることも日常茶飯事です。僕は記憶力があまりよくないので、書き留めて置かないと後で思い出せないんですよ。今の僕にとってメモアプリは、最重要なワークツールですね。

「オロナミンC」

飲むとテレビCMのイメージとともに「元気ハツラツ!」の言葉が頭の中に浮かんできて、今日も1日頑張ろうと思えるんですよね。あと、僕はあまり荷物を持ちたくないので、その場で飲み切れるサイズ感も気に入っています。自宅の最寄り駅の自動販売機でほぼ毎朝買っているのですが、頻繁に売り切れになっているので、もしかしたら僕のせいかもしれません(笑)。

 

LOGIC | CULTURE

本号から新連載!教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。

illustration: Nobuko Uemura


「スキンケア映画学」第2回 

『アメリカン・サイコ』

 映画『アメリカン・サイコ』の主人公パトリック・ベイトマンは、口が滑っても尊敬に値するとは言えない人物です。仕事こそウォール街の高給取りですが、目下の関心事といえば、同業者とのマウンテンィング合戦に勝つこと。彼らと比べ、より上質なスーツを着ること、より趣味のいい名刺を持つこと、より予約の取れないレストランを押さえることに執念を燃やすような、心のさもしい残念な人物なのです。

 ここまでなら、笑って済ませられもしましょう。しかし、ベイトマンの夜の顔を知ったらそうもいきません。なんせ彼は、仕事が終わると自宅に客を招いては、血祭りにあげることで欲求不満を解消する快楽殺人鬼なのですから。そんな常軌を逸した極悪人の彼ですが、ただひとつ感心せざるを得ないのが、スキンケアへの飽くなきこだわりです。映画史上もっとも有名と言っても過言ではないベイトマンのモーニング・ルーティーンを見れば、それがわかるでしょう。

 彼は朝起きると、顔がむくんでいたらまずアイスパックをつけ、それから腹筋をします。アイスパックを外したら、次は毛穴ケア。シャワーではジェルクレンザー、ハニーアーモンドのボディスクラブ、顔には角質除去のジェススクラブ、その後にミントの顔パックを10分つけて他の支度をします。ヒゲ剃り後はノンアルコールのローション、そしてモイスチャライザーとアイクリームに、仕上げは保湿効果抜群のローション……といった具合です。いやはや。

 ここで思い出すのは、晩年の三島由紀夫が自身の筋肉について語っていた言葉です。いわく「人間は自分の内面を包むのに礼儀正しくなければならない。文学者の内面はサンタンたる泥沼であって、そんな醜いものをひと目にさらすべきではない。外形さえ健康な力にみちていればそれが“礼儀正しい私”の姿である。だから、たとえ裸であっても、私は礼儀正しいのである。カッコいいということは、この意味におけるモラルに忠実であることだろう」。要するに、どんなに醜い内面を持っていようが、健康な力にみちた外見という鎧をまとってさえあれば、人は礼儀正しく、さらに言えばカッコよくあれると、三島は言っているのでしょう。この鎧が三島にとっては筋肉であり、ベイトマンにとってはスキンケアによって磨きあげられた肌だったのです。

 もう少し身近なところに敷衍してみれば、こんなことが言えるかもしれません。ビジネスマンとして生きていると、理不尽なことや不平不満を漏らしたくなることは少なくありません。そのことで多少なりとも内面が醜くなってしまったと感じる経験は、誰にでもあるはずです。その内面を見せずにカッコよくサバイブするためには、覆い隠すための鎧が必要なのだ、と。まぁ、ベイトマンに関しては、内面の醜さが鎧を突き破ってしまったわけですが、そうならないためにも(いや、普通はそうはならないわけですが)、より強い鎧を手に入れるべく、より質のいいスキンケアをすべきなのです。



鍵和田 啓介 
1988年生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。

(この記事は2021/1/13にNewsletterで配信したものです)

 

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