LOGIC MAGAZINE Vol.09

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

調味料に投資しよう

コロナ渦の長期化で、家で料理をつくる機会が増えたのではないだろうか?そこで、今回は調味料に注目してみたい。総務省がまとめた家計調査2020年上期累計(1〜6月)の食料支出によると、油脂・調味料の消費が前年比に比べて10%近くも上昇している。もともは比較的横ばいで推移していたものが、過去20年で最高の消費額となっている。

かくいう筆者はもともと料理が好きなのだが、調味料こそ、低い投資で美味しさのレバレッジが効くものだと信じてる。冬なので鍋で例えよう。出汁の味付けに使う醤油を200円のものから500円のものに変えてみてほしい。見違えるほど味がよくなる。その差300円。一方肉のグレードを上げるとしよう。国産としか書いていない無銘柄の豚バラ肉は100g200円程度(筆者自宅の近所にあるスーパー調べ)に対し、鹿児島産の黒豚は100g400円程度。2〜3人で食べるとして300g購入するとその差600円、週に1回鍋にするとしたら1ヶ月2400円。いかがだろうか?確かに黒豚は美味しい。ただ、調味料は長期で使えるし保存もきく。ちょっとグレードを上げるだけで、お店レベルの味にすることも可能だ。

と、言いっ放しもなんなので、ここで、料理が劇的に美味くなるおすすめの調味料をいくつか紹介する。選定基準として、スーパーやamazonで手に入りやすいものをショイスした。

①『カップ印 きび砂糖』(砂糖)
どんな料理も、デザートにも、甘さ控えめながらミネラル感とコクのある味わいがくせになる。

②アルペンザルツ 岩塩(塩)
岩塩なのに、サラサラで使いやすい。まろやかでどんな料理にも合う。しかも固まりにくい。

③飯尾醸造 純米富士酢(酢)
有機米でつくったお酢で、酢特有のツンとした感じが弱く、ほのかな甘みと上品な味わいが特徴。飲んでも美味いレベル。

④緑屋本店 うすくち醤油 寿 あまくち (醤油)
いわゆる九州の甘い醤油。関東の人はあまり馴染みはないが、甘口醤油はほんといろんな料理に合う。おすすめはチャーンを炒めたときに少し入れると絶品です。

⑤日東醸造 三河しろだし(だし)
白だしの中でもしょっぱくなく、うどんつゆから鍋物までなんでもいける。もう、なでもいれたくなる。

以上、あくまで筆者の独断と偏見によるものなのでクレームはご容赦いただきたい。ぜひ、次に調味料を買う機会にトライしてみてほしい。料理は調味料で変わると実感できると共に、料理が10倍楽しくなること間違いない。(佐々木智也)

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。

009
ANDART代表取締役
松園詩織氏

LOGIC MAGAZINE第9回インタビューは、ピカソ、バンクシー、草間彌生といった人気アート作品を少額から共同保有できるプラットフォーム「ANDART(アンドアート)」を手がけるANDARTの松園詩織氏。そもそも「ANDART」は、松園氏がアートに夢中になったことが起業の原点にある。アートをもっと一般に開かれたものにしたい。そんな想いから事業に奮闘する彼女の現在にフォーカスする。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

もっと当たり前のように、
アートが存在する世界を目指して。

―松園さんがアートに興味を持つきっかけは何だったんですか?

松園:もともと父親がアート好きだったこともあるのですが、本格的に好きになったのは、仕事であるアートフェアのプロジェクトを担当したことですね。そのときにいろんなギャラリストやアーティストから作品の説明を聞いて、自分の視野が広がった気がして。それまではアートのことを日常と切り離された存在のように考えていました。表参道や銀座のギャラリーに足を運んでも、詳しい説明は書いてないし、値段も貼ってあるわけではなかったので。でも具体的に話を聞いてみると、実際は普段の購買活動の延長線上にあるものだと思ったんです。それで一気に親近感を湧くようになって、もっとビギナーに対して開かれた世界があってもいいんじゃないかなと考えるようになりました。

ーその体験があって、アート作品を複数人で共同保有できる「ANDART」を運営されていると思うのですが、日々の原動力になっているものは何なのでしょうか?

松園:ふたつあります。ひとつは、私たちが解決できるはずの課題がいくつもあること。まだまだ知られていない魅力的なアーティストがいたり、時代にそぐわないアナログな状況があったりするので、それらを自分たちのアイデアで解決できるという確信があるんです。もうひとつは、志を共にするメンバーがいること。肉体的に疲れているときでも、メンバーの顔が頭をよぎると踏ん張れるんです。みんなアートが好きで、役職関係なく意見を言えるのが個人的に良いなと思っています。私自身も「CEOは役割のひとつだから」と言っていて、フラットな関係でいろんなことを話すようにしています。

―現在は何名でサービスを運営されているんですか?

松園:フルコミットは7人、インターンや業務委託の方も含めると20名弱くらいですね。あと、今年になって現ポーラ美術館学芸員の内呂博之さんが顧問に就任してくださったので、そういうプロの力も借りながら新しい市場を作っていきたいですね。

アートに対する固定概念を壊していきたい。

―2018年9月の起業から2年以上が経ちました。事業を続けるなかで見えてきた課題はありますか?

松園:まだまだアートに対して固定概念があると感じます。高尚なイメージが強いというか、姿勢を正して見なきゃいけないと考えている人が多いのかなって。でも、もっと気軽に楽しんでも良いと思うんですよね。「パケ買い」ってあるじゃないですか。見た瞬間に心を奪われるっていう。

―ありますね。

松園:それって理屈じゃなくて、感覚だと思うんです。そういう出会いをアートでも生み出したくて、ANDARTとは別に手に入る価格帯のアート作品を実際に購入できる「YOUANDART(ユーアンドアート)」というECサイトの運営を最近スタートしました。

―ANDARTとの棲み分けはどのように考えているのでしょうか?

松園:ANDARTはひとりでは購入ハードルが高い高額作品ややコレクションのデジタル化をテーマにしていて、「こういうアートの持ち方ってなかったよね!」という新しいソリューションの提案ができると考えてはじめました。それによってリアルとデジタルが融合して生活に溶け込むようになればいいなと思っていて、どちらかというと未来を提案するサービスだと思います。一方のYOUANDARTは、もっと気軽にアートを楽しむ機会を用意したいなと思ってスタートしました。日本には、アートを家に飾りたいけれど、その機会がない人がたくさんいるので、そういう方の認識をアップデートしていきたいなと考えています。

―両方とも大切なことですよね。

松園:楽しみ方は一人ひとり自由で良くて。私自身はアートとの接点を増やしたいだけなんです。それによってアートを楽しむ価値観が当たり前になれば、日本人の心はもっと豊かになるんじゃないかなって。

―中国や韓国と比較すると、日本はアートに接する機会がすごく少ない印象があります。

松園:アジアはコロナ禍でもすごく活況です。アート教育がもっと重要視されると変わる部分もあると思います。ただ、そもそも日本はアートを飾る場所が少ないという問題もあって。一般家庭でも富裕層コレクターでも、スペースに限界があるのは同じで。作品を購入できても飾る場所がないことが多いんです。だからこそ、ANDARTのようにデジタルでアートを鑑賞する楽しみ方がひとつの新たな購入手段として浸透するといいなと思っています。

 

もっと気軽にアートの話をできるように。

―仕事をする上でさまざまなハードルがあると思うのですが、何が難しいですか?

松園:いかにして良い作品を入手するかは常に課題ですね。正直アートは資金があれば何でも買えるというものでもないというか、魅力的な作品ほど需要が高まって争奪戦が起こるので、なかなか一筋縄ではいきません。そもそもアートは簡単に大量生産できるものではないし、だからこそ希少性が高くなって投資の対象にもなるのですが…。あとはC向けサービスを設計していく中で、作品は単なる商品ではないというアーティストへのリスペクトと、多くのユーザーがほしいであろう情報の質や見せ方が拮抗する場面があって、このバランス感覚をどう保つかにも日々悩みながらアップデートを重ねています。

―今後取り組みたいことはありますか?

松園:アートの鑑賞体験の充実に注力していきたいです。ANDARTはリアルでもバーチャルでもアート鑑賞の機会を提供しているのですが、コロナもあってこの1年はなかなか思うようにリアルなイベントを開催することができていなかったので。一方で、デジタルでいかにクオリティの高い鑑賞体験を提供できるかも我々のチャレンジのしどころだなと考えています。VRやARを駆使する方法も模索していて、何かしらのかたちでアップデートしたいです。

―それが実現できるとデジタルの鑑賞体験もまた違ったものになりそうですね。

松園:価値の高いスニーカーをデジタルコレクション化する事例はすでにあるので、そういう未来は必ずくると思うんですよね。そうしたら、もっと気軽にアートのことを話せるようになる気がします。それこそ、映画や音楽について話すのと同じくらいのレベル感になったらいいなって。それを実現するなら、今しかないという気持ちもあるんです。

―機運が高まっているということでしょうか?

松園:特にここ1年の間でアート界も少しずつ変わってきていて、インターネット取引が増えたし、メガギャラリーでも新しいことをはじめようという動きがあります。また、家で過ごす時間が増えたことで、アートを楽しみたいというニーズも若者を中心に高まっている印象もあって。そういう空気感を強く感じるので、とにかく多角的にアート事業に取り組んでいきたいですね。

 

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松園詩織さんの仕事のパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「1日1本コンテンツを観る」

アニメや漫画が大好きで、1日に1本はコンテンツを見るようにしています。今流行っているアニメや映画化された作品はひと通り見るし、あえて古い作家、たとえば藤子不二雄や楳図かずおの少しニッチな短編集も読みます。あと、最近読んでぞわっとしたのが、うめざわしゅんさんの作品です! 気分転換になるし、古い作品を眺めていると「日本の現代アート界でトレンドになっているこの作品のテイストは、この作家さんにインスパイアされていそうだな」といった発見があってすごく面白いです。

「リモートワークでもメイクをする」

現在はリモートワーク中で人に会わない日も多いのですが、女性として美しくありたい気持ちも大切にしたいので、日によってメイクを変えたりしています。ずっと使っていなかった攻めた化粧品を引っ張り出してみたり(笑)テンションを仕事モードに切り替えることができるので良いんです。

 

松園詩織さんおすすめのワークツール

「ホワイトボード」

会社員時代から家にホワイトボードを置いていて、1日のタスクとか、まだ取り組めていないことを書き出すようにしています。そうすると頭の整理になるし、忘れないで常に考え続けることもできるんですよね。それで完了したら消す。それがとにかく快感で。そうやってゲーム性を持たせてルーティン化していくのは、自分なりの仕事術かもしれません

LOGIC | CULTURE

本号から新連載!教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。

illustration: Nobuko Uemura


「スキンケア映画学」第3回 

『ホーム・アローン』

 少年はいつどのようにして大人の男への階段を上るのでしょうか。
 例えば、ある種の民族には少年が大人になる過程で、避けては通れぬ儀式があるそうです。有名なのが、オーストラリアの先住民であるアボリジニ。アボリジニの少年はある年齢に達すると、家に押し入ってきた大人の手によって、母親から無理くり引き離されます。そればかりか、森の中へ連れ去られた後、数ヶ月から長いときには数年間にわたりいろいろな教え(ときには痛みを伴う)を授けられるのです。しかし、これを経て帰還しないと、彼らは晴れて村人から大人として認められないというから、末恐ろしいことこの上ない。アボリジニ以外の世界各国の民族にも同じような成人の儀式があるようで、文化人類学ではこれを「通過儀礼」と呼びます。
 フランスの文化人類学者アルノルト・ヴァン=ジェネップは、この「通過儀礼」のプロセスを「分離」「過渡」「統合」という三段階に分けています。要するに、母親と引き離されてから(分離)、森の中で教えを受けている最中の“子供でも大人でもない状態”(過渡)を経て、すべて終わって大人への階段を登り始める(統合)というわけです。

 なぜこんな小難しい話をしているかと言うと、『ホーム・アローン』を観たからにほかなりません。というのもこの作品、「通過儀礼」の三段階プロセスを、変化球的に描いているように思えるのです。そのことを考えるために、まずは『ホーム・アローン』の物語を確認しましょう。

 主人公は5人兄妹の末っ子、8歳のケビンです。彼らの家族はクリスマス休暇を利用してパリ旅行へ向かうのですが、出発当日のゴタゴタの中で、ケビンだけが置いてけぼりを食らってしまいます。大家族の暮らしにウンザリしていたケビンは、最初こそ悠々自適な一人暮らしを満喫していました。しかし、二人組の泥棒が家に侵入しようとしていることに気づいたからさぁ大変。怖気づくケビンでしたが、最後には「この家の主は僕だ。守らなくては」と一念発起し、家の至るところにトラップを仕掛け、見事に泥棒たちを撃退してしまうのです。

 この物語を「通過儀礼」の三段階プロセスに当てはめるとどうなるでしょうか。まず、ケビンが家族から取り残され独りになるのが「分離」です。多くの民族において、この分離は家以外の場所に行くことを指しますので、ここがやや変化球的と言えそうです。そして、怖気づきつつも「この家を守らねば」という決意が芽生える「過渡」を経て、泥棒たちに戦いを挑んで勝利を収める「統合」へ……。そんなふうに見ることができるんじゃないかと思うのです。

 ここで注目したいのは、ケビンが戦いに挑む朝にまずしたことです。まるで戦地に向かう兵士のごとく、身だしなみを整えるのです。シャワー後、鏡に向かって髪をとかしながら彼はつぶやきます。「シャワーを浴びて、体の隅々まで洗ったんだ。足の指の間やおへその中までね。はじめてだったけど、楽しかった。髪は大人用のシャンプーで洗って、リンスも使った。歯ブラシが見当たらないので、今日中に買ってこよう。それ以外は調子がいいね」と。そして、ローションを両頬に叩きつけるのです。肌に滲みたのか、メンソールの効き目に驚いたのか、彼は「ぎゃーーーー!」と叫ぶことになるのですが。

 いずれにしても、ケビンが「過渡」から「統合」へと進んむその瞬間、まず人生で初めてスキンケアをしているのです。それこそがケビンにとって、大人の男への階段を上るために避けては通れぬ「通過儀礼」だったということでしょう。実際、「ぎゃーーーー!」という叫びを通して、慣れない子供にとっては痛みを伴うこととしても表現されています。逆から言えば、大人の男たるものしっかりとスキンケアをするべきである。『ホーム・アローン』には、作り手のそんなメッセージが込められていると考えるのは、さすがに深読みが過ぎるでしょうか。



鍵和田 啓介 
1988年生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。

(この記事は2021/2/19にNewsletterで配信したものです)

 

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