LOGIC MAGAZINE Vol.18

LOGIC MAGAZINE Vol.18

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック
 

LOGIC 次回バーション経過報告

LOGIC代表の佐々木です。ここ数日ですっかり寒くなってきましたね。体調を崩さずに過ごせていますでしょうか?ひさしぶりにLOGICの次回バージョンの経過報告をしさせていただきます。今回は香りの話です。

次回バージョンですが、中身についてはある程度固まり、現在は香りのアップデートを進めています。LOGICは香りもひとつのパフォーマンスUPの要素だと考えているので、もちろん現状の香りもこだわって作ったのですが、これまでにアンケート結果や実際にヒアリングした時の声をふまえつつ、より毎日使いたくなるような、より気持ちが整うような香りを目指して再検討しています。プロセスとしては、まず、私自身が様々なインスピレーションを元に、20パターン程の香りサンプルをつくり、そこから絞り込み、そのサンプルをもとにプロの調香師に仕上げてもらいます。具体的なお話をすると、LOGICは精油ベースの香りなので、例えば、ベルガモットを◯滴、セージ◯滴、ローズマリーは、、、という感じで下の写真のような小さなビーカーに1滴1滴垂らしながらかき混ぜ、サンプルをつくっていきます。

香りサンプルづくりの道具

サンプルをもとに香りを仕上げたら完了!といきたいところなのですが、それで終わるわけではありません。実際のバルク(中身)自体にも匂いがあり(基剤臭と言います)、香り方が変わってくるので、そこでも微調整が必要になります。また、基剤臭が気になる場合は、マスキングといって、匂いで匂いを打ち消すような調整をおこないます。香りは、そういった試行錯誤を繰り返してつくられていきます。もちろん、あらかじめある香り見本から選ぶ場合もあるでしょうし、イメージだけ伝えて作ってもらうケースもあると思いますが、LOGICの場合はこのように進めています。

このアップデートで、100人中100人が好きな香りをつくるというのは無理ですが、ひとりでも多くの人がLOGICを愛用したくなる理由になってくれることを願いながら鋭意制作中です。尚、先日募集したモニターの方々にはこの香り候補が反映されたサンプルをお届けする予定なので、楽しみにしていてください。また、随時報告していきます(佐々木智也)

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。
 



018
株式会社ORPHE
菊川裕也氏

LOGIC MAGAZINE第18回インタビューにご登場いただくのは、スマートフットウェアの開発や、センシング&クリエイティブプラットフォームの提供を行っている株式会社ORPHE(オルフェ)の菊川裕也氏。2014年、大学院に在籍しているときに開発したスマートフットウェア「ORPHE ONE」は、ソールに100 個のLEDを内蔵し、光と音をスマートフォンのアプリでカスタマイズできることで話題に。2016年の一般発売時には、初期ロットの1000足が瞬く間に完売した。その後、アシックスとタッグを組んでセンサー付きのフットウェアを開発したり、「ORPHE」の開発で培った技術をもとにセンシング技術をクリエイターに活用してもらうためのプラットフォームを構築したりと、着実かつ大胆に事業を拡大している菊川氏。彼の夢中に迫った。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

靴という日用品を通じて
人々の暮らしを変えたい

ー菊川さんは2014年から今日に至るまでスマートフットウェア「ORPHE」の開発を続けていますが、何がそこまで夢中にさせているのでしょうか?

菊川:僕は大学院でインタラクティブアートを研究していたのですが、2013年頃にIoTが盛り上がりを見せていたんです。それで日用品をインターフェイスにして表現に変えることはできないかと考えて辿り着いたのが靴でした。インタフェース研究の領域では靴にコンピュータを入れるような研究は以前からされていたんですが市販品としては出ていませんでした。そこにチャンスがあるのではないかと思いました。その頃から靴という日用品が表現力を持つことで生活が変わっていくことを目指しているのですが、関わる領域はそのときどきの社会の流れや技術トレンドによって変わっていて。最初はパフォーマーの表現力を高めるプロダクトとして開発して、それからスポーツ業界に参入して、最近は医療の現場にも関わるようになっています。だから、ずっとひとつのことをしているとも言えるし、まったく違うことをしているとも考えられるんですよね。それもあって飽きずに事業を続けられているんだと思います。

ーどんどん新しいことに取り組めている実感があるのでしょうか?

菊川:そうですね。実際、初期の段階から「靴がインターフェイスになることでクリエイティブの幅が広がっていく」と言い続けていたのですが、そのときは技術も追いついていなかったので、ただの光る靴みたいな見え方をしていたんと思うんです。でも、ひとつずつ課題をクリアしていくことで、当時思い描いていたことが実現できるようになっていて。今では歩いているときの情報をリアルタイムで取得できるようになっています。そういう変化を感じられるのは、すごく面白いですね。

ー表現領域に進むこともできたと思うのですが、それをしなかったのはなぜなのでしょうか?

菊川:実は開発の初期段階では、光の表現を追求していくか、センシング技術を高めていくかで悩んだんです。でも、誰もが日常で履く靴がセンサになってビッグデータを集めることで、他の人ができない表現ができるようになると思った、という感じです。ただ、どちらの道を選んでも最終的には同じゴールに辿り着くと思っていて。回遊する順番が違うだけというか。結果として、「ORPHE」を通じて日常生活が変わればいいなと思っています。

 

テクノロジーは人間が幸せになるためにある

ー菊川さんが取り組んでいることって、最終的には人間の解明につながる気がします。

菊川:確かに。僕自身、テクノロジーによって身体が拡張されていくことにはすごく興味があって。ただ、人間が必要なくなる方向には向かいたくないんですよね。人間のためにテクノロジーがあって、それによって人間が幸せに暮らせることが大事だなと思うんです。ただ、その幸せの形はテクノロジーの進歩によって変わっていくべきで。そこに取り組んでいきたい気持ちが強くあります。実は今、いろんな大学に「ORPHE」を活用するための研究キットを販売していて。そのなかに「ORPHE ANALYTICS」というソフトウェアがあって、「ORPHE」を通じて得た情報を閲覧できるだけでなく、iPhoneで撮影した動画から姿勢を解析したり、Apple Watchで取ったデータから心拍数を測定したりできるようになるんです。

「ORPHE ANALYTICS」と歴代のORPHEたち 

ーそれはどのようなメリットがあるんですか?

菊川:これまでも歩行に関する研究は行われていたんですけど、モーションキャプチャが置けるような限られた場所じゃないと精度の高いデータを取ることができなかったんですね。だから、日常における人間の無意識の動作についてはほとんど解明されてないとも言えて。

ーそういうデータを「ORPHE ANALYTICS」があれば簡単に取得できるようになる、と。

菊川:将来的には、研究者が取得したデータから導き出したアルゴリズムを「ORPHE」を履いている人たちに還元できるような仕組みも作りたいんですよね。たとえば、人間が転倒するときの具体的な状況がわかるようになったら、防止するための機能を靴に備えることもできると思うんです。ほかにも可視化されていないから気づいていないことって日常のなかでたくさんあって、そこにはクリエイティブが役立つ余地もあるはずで。

ークリエイティブですか?

菊川:2021年の7月に社名を「no new folk studio」から「ORPHE」に変更したんですけど、そのタイミングで「ORPHE」をスマートフットウェアというプロダクトからセンシング&クリエイティブプラットフォームとして再定義したんですね。それは「ORPHE」で得られた情報を研究者だけでなく、創作者、クリエイターにも役立ててほしいという想いがあるからです。例えばランニング中に音楽を聴くと負荷が落ちるという研究結果があるのですが、データを応用すれば走り出した瞬間のちょっと怠いと感じる瞬間に聴く音楽や、息が上がってめちゃくちゃしんどいときに聴くための音楽が新たにつくられると思うんですよ。

 

一生をかけてセンシングとクリエイティブを結んでいく

ー「ORPHE」がプラットフォームになるということは、菊川さんの及び知らないところでクリエイティブなものがさまざまに生まれる可能性もあるわけですよね。それに対するワクワク感のようなものもあるのでしょうか。

菊川:すごくありますね。そういう意味では僕は大テーマだけ決めて、他の人がそこからどんどん広げてくれたらいいなと思っています。実際、僕たちがスポーツ分野に進んだのも、為末大さんが初期の製品の「ORPHE ONE」のソールが光っているのを見て「正しいランニングフォームで走れているときだけ光ったらすごく良い練習になる」とおっしゃってくれたことがきっかけになっていて、僕が発案したものではないんですよね。むしろ、僕にない発想で世の中が変わっていくことの方が興奮するだろうなと思います。

ーこれから先、どんなことに取り組む予定なのでしょうか?

菊川:すべてをひとつなぎにすることがテーマになっていて。実は、社名の変更と合わせて会社のロゴを新しくしたんですね。全音符がモチーフになっているんですけど、陸上のトラックぽさもあるし、フィードバックループが起こっている雰囲気もある。この形に僕の実現したいことがすべて詰まっている気がするんですよ。とはいえ、まだ実現できていないことばかりだし、センシングとクリエイティブを結ぶということに関しては、一生かけてできることなのかなと思います。

 

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菊川裕也さんのパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「ランニング」

自分たちでつくったアプリの検証も兼ねて夜に走っています。音楽を聴きながら、淡々と。これは日本だけなのかわからないのですが、長距離を走ること=耐え忍ぶものとして浸透しすぎている気がするんですよね。もちろん、それがマラソンとか駅伝の人気を後押ししている部分もあると思うんですけど、僕自身は快楽主義者なので、我慢して走るみたいな考え方にはあんまり共感できなくて。サウナみたいに気持ち良いからやるっていう価値観がもっと浸透したらいいなと思っています。

 

菊川裕也さんのおすすめのワークツール

「Day One Journal」

TO DO管理アプリをいろいろ試したもののなかなか続けられず、最終的にたどり着いたのが「Day One Journal」という日記を付けるアプリでした。管理することを諦めて、ひたすら残すことにしたわけです。その手法がどうやら僕に合っていたみたいで、今のところ習慣になっています。その日の出来事とやり残した仕事を書くようにしているのですが、日記を付けておくとそのときに何をしていたのかという記憶が想起されやすいし、ログが残ることで日々の取り組みが積み上がっていく感覚がしていいんですよ。

 

LOGIC | CULTURE

教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。


「アートのロジック」第6回

『フェルメール』

知ってるようで知らないアートを読み解く連載「アートのロジック」。第6回は、17世紀のオランダで活躍した画家ヨハネス・フェルメールについて。日本でも高い人気を誇る彼の作風はいかにして確立していったのでしょうか。当時の社会情勢を踏まえながら解説します。


ヨハネス・フェルメールは、17世紀のオランダで活躍した画家です。世界はもちろん、日本での人気もとても高く、展覧会の開催や作品の来日のたびに大きな話題を集めます。

とはいえフェルメールは、それほど「派手」な画家とは言えないでしょう。その作品の多くに描かれているのは、柔らかな光に包まれた部屋の窓辺に立ち、手紙を読んだり、牛乳を注いだり、楽器を演奏したりする、いわば日常の「些事」に勤しむ人の姿です。

同時代のオランダを代表する画家で、多くの注文に応えるため、首都アムステルダムで大工房を率いたレンブラントとは対照的に、フェルメールは故郷の古都デルフトで、画家以外に宿屋などの仕事をしながら、10人ほどいたとされる子どもに囲まれ、活動しました。寡作でも知られ、現在まで残る作品は30数点に過ぎません。では、そんなフェルメールの作品が、時代を超えてこれほど重視され、多くの人を惹きつけるのはなぜなのでしょう。

フェルメールが生きた17世紀のオランダは、従来は価値を認められていなかったさまざまな絵画のジャンルが隆盛した、西洋美術史にとって重要な動きが起きた場所でした。

西洋では19世紀頃まで、絵画のジャンルのヒエラルキーという考え方が強くありました。これは、描く主題によって絵画の種類を階層化するもので、一番価値が高いのが、聖書や神話、歴史上の出来事を描く「物語画」、次に「肖像画」、市井の暮らしを描く「風俗画」や風景を主題にする「風景画」と続き、最後に「静物画」が位置付けられます。いわば、公共性や社会性の高い主題が、身近で個人的な主題の上に置かれていたのです。

しかし、当時のオランダでは、このランク付けに縛られることなく、風俗画や風景画、静物画が多く描かれ、それぞれの表現が洗練されていきました。というより、それまで物語画や肖像画の「背景」や「部分」に過ぎなかった風俗や風景、静物の要素が、それ自体に焦点を当てた絵画ジャンルとして独立・発展したのも、じつは17世紀以降のことです。

ここには、当時のオランダの社会状況が関係しています。フェルメールの生きたオランダ共和国は、16世紀末、スペインの支配下にあったネーデルランドのうち、プロテスタント勢の強い北部が独立してできた国です。カトリックと異なり、プロテスタントでは教会に宗教画を飾ることが否定されていました。さらに、海洋貿易による経済発展で、オランダでは王侯貴族に代わり市民が社会の中枢を担う市民社会が繁栄します。つまり、当時のオランダの画家たちは、中世以来、美術の二大パトロンだったカトリック教会と王侯貴族による注文が見込めないなか、市民が親しみを持てる絵画を作る必要があったのです。

フェルメール自身の歩みが、このことをよく表しています。1632年、デルフトで宿屋兼画商を営む家に生まれたフェルメールは、15歳頃に絵の修行を始め、結婚と同年の1653年に独立を果たしました。当初、彼が目指したのは、優れた画家がなるべきとされた物語画家でした。実際、初期のフェルメールは、少数ですが宗教画や神話画を手がけています。

しかし、レンブラントがいた首都アムステルダムならともかく、デルフトでそれらのニーズは期待できません。また、実家や妻の家族との密接な関係もあり、デルフトで生きることになったフェルメールは、1956年頃に風俗画家へ転身。その後、同時代の風俗画家の作品や市場の動向を積極的に学び、試行錯誤を繰り返し作風を模索していきました。

例えば、《眠る女》は初期の風俗画の一枚ですが、X線写真などを用いた調査によると、もともと描かれていた犬や人物を消したりと、作品のあるべき姿を探っていたようです。一方、フェルメールの作品に特徴的な瞑想的な気配も、すでに表れています。

《牛乳を注ぐ女》(1658〜59年)は、そんな模索を経て、フェルメールの方向性が確立された時期の傑作です。机のパンが不自然に輝くほど、空間に溢れる光の表現。背景の大きな壁にも感じられるシンプルな画面へのこだわり。黄と青、赤と緑のような補色関係を巧みに利用した色彩の魅力。また、牛乳を注ぐという些細で日常的な行為を、まるで永遠の出来事のように切り取る視点。フェルメールの風俗画の特異性とは、市井の人の暮らしを描く風俗画に、まるで宗教画のような佇まいを与えた点にもあるのだと思います。

フェルメールの絵画は、モチーフから楽しむこともできます。例えば、彼の作品によく登場するアイテムに手紙がありますが、この背景には、商業国家オランダでは契約書の読み書きのため他国より市民の識字率が高かったことや、17世紀に本格的な郵便制度が整備されたといった事情もあったといいます。また、多くの作品の壁に掛かる巨大な地図や、《天文学者》や《地理学者》に描かれた天球儀や地球儀などは、手紙と同様、窓辺からどこか遠くへと鑑賞者の意識を誘うと同時に、大航海時代のオランダの世界への眼差しを感じさせます。

フェルメールはそんな凝りに凝った作品を、年に数枚のペースで描いていきます。こうした比較的余裕のある制作を彼が実現できていたのは、裕福だった妻の母親の支援が大きかったと言われます。ラピスラズリという高価な鉱石を使い、のちに「フェルメール・ブルー」と呼ばれる美しい青色を表現できたことも、そうした環境とは無縁ではないでしょう。

絵の買い手にも恵まれ、主要な画家の組織である「聖ルカ組合」の理事も務めるなど、同時代から一定の評価を得ていたフェルメール。晩年には《絵画芸術》などの作品で、物語画にもふたたび挑戦しましたが、惜しくも43歳で逝去。その後、しばらく時代の流れのなかで忘れられた存在でしたが、19世紀半ばに再発見され、多くの人を魅了しました。

ごく最近も、フェルメールの絵画をめぐるニュースが人々を興奮させました。彼が風俗画家に転身した頃の作品《窓辺で手紙を読む女》について、壁面の奥にあると以前から存在が知られていたキューピッドを描いた画中画が、修復の末に姿を現したのです。気になる方は、一度画像を検索してみてください。壁の奥から徐々に画中画が現れる様子はとてもドラマチックです。この画中画の削除は、従来、画家自身によるものとされていましたが、新しい研究で第三者の手によるものと判明。大きく印象を変えた作品の解釈をめぐり、今後も熱い議論が交わされることでしょう。

大きく変化する社会状況のなかで、フェルメールが試行錯誤を重ねながら描いた、普通の市民のさりげなくも美しい暮らしの光景。その、わずか30数枚の絵画が、後世の人々をこれほど魅了し続けていることに、彼が作り上げた絵画の力をあらためて感じます。


杉原 環樹
1984年東京生まれ。武蔵野美術大学大学院美術専攻造形理論・美術史コース修了。出版社勤務を経て、現在は美術系雑誌や書籍を中心に、記事構成・インタビュー・執筆を行う。主な媒体に美術手帖、CINRA.NET、アーツカウンシル東京関連。編集協力として関わった書籍に、卯城竜太(Chim↑Pom)+松田修著『公の時代』(朝日出版社)など。


(この記事は2021/10/19にNewsletterで配信したものです)

 

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