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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

スニーカーバブルの現在地

かつて、NIKEの「エアマックス95」が10万円以上の値をつける時代があった。当時は「エアマックス狩り」なんていう物騒な事件が多発したり、偽造品も溢れかえったりと、日本中の若い世代がスニーカーに熱狂し、そしてブームは終焉した。あれから20数年、今度は世界規模でスニーカー市場が熱狂に湧いている。「Stock X」や「SNKRDUNK」などCtoCマーケットプレイスが続々と登場し、あらゆるレアスニーカーが世界中で高値で取引されている。日本発で急成長していた同サービス「Monokabu(モノカブ)」がSNKRDUNKに買収されたのも記憶に新しい。

冒頭で言及した20数年前と大きく違う点としては、2次流通市場の確立が大きい。当時はネットオークションもフリマアプリもなく、情報も限られていたので、店舗が時価的に価格を決めていた。一方で現在は個人間の取引が時間や場所を問わずできる環境にあるため、よりリアルな需要と供給で相場が動いている。現在の方が健全に思えるがその弊害もある。スニーカーを金脈を見なして、転売やリセールを目的にする人たちが増えたことで、過剰に金額が上がりバブルのような状況を産んでいる。メーカーも話題づくりのため、注目ブランドとコラボモデルを限定数量で販売するが、そのほとんどが発売数分に完売し、高額で2次流通に出回る。ユーザーや愛好家を通り越したまま、この状態が果たして続くのかは疑問点が残る。

これまでスニーカーはヒーローを生み続けてきた。伝説のプロスポーツ選手にミュージシャン、アーティスト、、、。そしてそのヒーローたちからカルチャーが生まれた。ただし、カルチャーの着火点は自分も手に入れやすいこと、そして愛用することだったはずだ。スニーカーというものは本来大衆的なものである。

昨今の現象はエコノミーの観点では非常にユニークではあるし、このままアート市場やレコード市場のように骨董的価値になっていくのか非常に興味深い。 ただ、いちスニーカー愛好家としては、投資アイテムとしてではなく、もう少し手に届くもので熱狂したいものでもある。いずれにしてもスニーカー市場から目が離せなそうだ。(佐々木智也)

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。
 



017
株式会社フラミンゴ
金村容典氏

LOGIC MAGAZINE第17回インタビューにご登場いただくのは、語学学習を軸に複数のサービスを手がける株式会社フラミンゴの金村容典氏。2015年の起業から6年。コアメンバーの離職や新型コロナウイルスの影響など、さまざまな困難から数年前までポジティブな経営ができていなかったという。それでも事業を継続し、前へと突き進んでいく原動力は何なのだろうか。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

幸せに暮らしながら、
事業も成功させたい

ーこれまでの道のりは決して順風満帆ではなかったと思うのですが、それでも金村さんが事業を続けていられるのはなぜだと自己分析しますか?

金村:ひとつは、この6年でありとあらゆる失敗をしてきたから。同じ失敗を犯さないために「オープンにすること」「見本になること」というバリューを新たに制定したんです。これは経営状況があんまりよくなかったときにmentoというコーチングサービスを受けて、何が問題だったのか、なぜその問題が起きたのかを整理して生まれたんですけど、その結果、風向きを変えることができました。もうひとつは、根拠のない自信があるからですかね。トム・ハンクスが主演を務めた『キャスト・アウェイ』という映画があって、飛行機事故で無人島に漂流したFedExのマネージャーが数年後に救出されるっていうストーリーなんですけど、普通だったら絶望するじゃないですか。でも、希望を捨てずに生き残る術を身につけて最終的に救われる。彼ってとんでもない楽観主義者で、しかも長期的に物事を見ているんですよね。海を小舟で漕ぐような中小企業経営って、まさにその状況だなと思うんです。

ー焦りとかはあんまりないですか?

金村:もちろん同年代の起業家の活躍を見て羨ましく思うこともあるんですけど、それで憂いていても仕方ないじゃないですか。成功するのが20代なのか、30代なのか、40代なのか。その違いでしかないんじゃないかなって。それよりも、楽しく幸せに仕事をすることのほうが大切だと思うんですよね。

ー楽しく、幸せに?

金村:つい最近、人生の価値観が変わったんですよ。これまでは未来の成功のためなら、今が苦しくてもいいと考えていたんです。でも、それは間違っていたなって。

ーどうしてそう思ったんですか?

金村:成功してそうな人を見てみても、そんなに幸せそうな感じがしなかったんですよね。満たされてないというか。また次の課題が生まれて苦しんでいる気がして。それで成功したから幸せになるんじゃなくて、幸せのなかに成功があるんじゃないかと考えるようになって、我慢するのをやめることにしたんですよ。そうしたら、気がすごく楽になって。社長が自分自身のコントロールを失っているときって、会社も調子がよくなかったりするんですよね。暴君がいると帝国が滅亡するのと似た関係というか。鶏と卵みたいな問題だと思うんですけど。会社の状況があんまりよくないから僕の調子が悪くなるときもあるし、僕の調子が悪いから会社の状況が思わしくなくなるときもあるし。だからこそ、社長がどれだけ自己理解ができて、ありたい自分でいられるかは重要だなと思うんです。

 

人は簡単に変わらないという視点で経営する

ー金村さんの幸せの定義ってどんなものなんですか?

金村:なんだろう、誇りを持ち続けられるかですかね。死ぬときにも誇りを持っていられたら幸せだなと思います。そのためには、いちばん有意義で規模の大きなことに取り組むことが必要で、会社の規模で言ったら僕が40歳になる頃には外国人に優しい環境を築いたうえで売上1000億くらいになっていたら誇りに思える気がします。あと、お客さまとチームメンバーとその他ステークホルダーが三方よしになっていること。お客さまには英語を身につけて実現したいことが叶えられる状態になってほしいし、ステークホルダーにはいい結果で応えたい。そして、メンバーは仕事をしながら自己実現できる状態でいてほしくて。パリでダンス学びながら働いているメンバーもいるし、旅しながら働いているメンバーもいる。自分に支援できる範囲内の幸せであれば実現したいなと思っています。

ーそれぞれにやりたいことを実現しながら働くことができているわけですね。金村さん自身も幸せに働くために心がけていることはあるんですか?

金村:天真爛漫でいられることですかね。僕はすごく心配性なんで、年下のメンバーだと「名刺持った?」とか「資料は確認した?」とか逐一確認してしまうんですよ。でも、それって双方にとってあまりよくなくて。結果、現在はメンバーのなかで僕が最年少なんですよ。かっこいい大人に見守られながら働くことができて、気持ちがすごく楽です。あと、フラミンゴに入社するメンバーには「僕は表情を読み取ったり、言われていないことを想像するのが得意じゃなくて、無理にやろうとすると変に悩んでしまうんです。だから、言いにくいことでも遠慮せずに言ってください」と伝えていて。

ー先に腹の中を明かしてしまうと。

金村:「自分はこういう人間なんで」とお互いに伝えてしまったほうが気持ちが楽だと思うんですよ。人を変えるなんておこがましいですし、変わりたくないですから。僕だって「明日から丸刈りで来い」と言われても無理ですし。「明日から性格を変えろ」と言われるのは、それくらい無理なことじゃないですか。

ー普通だと社風に個人を合わせてもらうことが多いですが、そういうことはしないわけですね。

金村:スキル重視で採用してもうまくいかないことのほうが多いんですよね。それよりもやりたいという気持ちのほうが大切で。今、外国人の語学指導をしているメンバーがいるのですが、言葉に力があって多くの信頼を得ていて。神通力みたいなものがついている気がします。僕は0から1を生み出すのが得意なんですけど、1から100にしていくことが苦手なので、すごく頼もしいです。

 

人生のなかで今が常に頂点

ー今はすごく楽しそうですね。

金村:そうですね。そもそも僕は人生のなかで今が常に頂点だと思って生きているんですよ。というのも、前進していたらできることはどんどん増えていくわけじゃないですか。事実、取り組む事業の数は増えているし、それぞれの事業も磨かれていますし。

ーできることが増えていることが楽しい、と。

金村:頑張れば頑張るほど、山の頂上に近づいている気がします。もちろん、たまにお腹が痛いとかはありますけどね(笑)。

 

______________

 

金村容典さんのパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「早朝のランニングと語学学習」

毎朝近くのコンビニまで2kmくらい走って水を購入し、韓国語の単語を覚えながら歩いて帰ってくるようにしています。きっかけはすごく打算で、韓国語のレッスンを事業としてはじめられないかと考えたことでした。でも、実際にサービス化までは至らず、習慣だけが残っています。ただ、会社に韓国語を話すメンバーがいるので、教えてもらったりして楽しいですね。

「同じ定食屋で昼食を食べる」

会社の近所に「ほの字」という定食屋があって、そこでいつも昼食を食べるようにしています。銀鮭定食がお気に入りなのですが、いつもあるわけではないので、食べられるときはけっこうテンションが上がります。あんまり食べすぎると眠くなるので、ご飯はいつも半分です。

 

金村容典さんのおすすめのワークツール

「トトロのぬいぐるみ」

つい先日、三鷹の森ジブリ美術館で入手しました。オフィスに置いてあって、オンラインミーティングで緊張しそうなときに眺めると心が落ち着きます。

「Simplenote」

もう6年くらい使っているメモアプリです。とにかく機能がシンプルで、使いやすいんですよ。早朝に韓国語を勉強した後、その日のタスクを整理して書き出すようにしています。あと、読み返すことはあんまりないのですが、気になったことを書くようにしています。そうすると何かあったときに思い出すきっかけになるので。

「MOFT 超薄型ノートパソコンスタンド」

けんすうさんがマストバイだと言っていたので購入してみたところ、本当によくて重宝しています。カフェとかで作業するときにすごく便利です。

 

LOGIC | CULTURE

教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。

illustration:うえむらのぶこ


「スキンケア映画学」第7回

『リーサル・ウェポン3』

 父は子に何をしてやれることができるのか。もっと言えば、大人は子供に何をしてやることができるのか。『リーサル・ウェポン3』が観客を突きつけるのは、そんな問いに他なりません。

 本作は、LA市警察本部捜査第一課に勤めるロジャーとマーティンによるデコボココンビ(ロジャーをメル・ギブソン、マーティンをダニー・グローヴァーが演じています)が、さまざまな巨悪に立ち向かう『リーサル・ウェポン』シリーズの3作目に当たります。シリーズを通して、銃撃戦、カーチェイス、爆破シーンがド派手に繰り広げられる、痛快アクションシリーズとして有名です。1作目こそシリアスなタッチではありますが、回を追うごとにみるみるコメディ色が強まり、その雰囲気を一言で表すなら“ハリウッド版『あぶない刑事』”。現在4作目まであり(2016年から2019年にかけてはキャストを変えてTVドラマシリーズ化もされました)、今年(2021年)のはじめに5作目製作決定のニュースが報じられましたが、去る7月6日に監督を務めたリチャード・ドナーが残念ながら亡くなってしまいましたので、どうなってしまうのでしょうか。ファンとしてはぜひとも続きが観たいところですが。

 では、そんな王道娯楽大作シリーズのひとつである『リーサル・ウェポン3』で、冒頭の問いはどのように描かれているのでしょうか。注目したいのは、50歳にして自主的に刑事を引退するというマーティンです。彼の口からその理由が詳しく語られることはありません。多忙を極める仕事から足を洗い、妻子と過ごす時間を作るためでしょうか。彼が家族を愛しているのは一目瞭然ですが、いかんせん仕事が忙しく、家庭のことは妻に任せっきり。子育てに参加することはほとんどないらしい。父として子供に何もしてやれなかった生き方を、改めるべく引退を決意したというのはありえそうな話です。加えて、ヒゲを剃るたびにカミソリ傷が残るほど肌が老いたと語られるシーンがありますから、肉体の衰えも自覚しているのでしょう。

 そんなある日のこと。2人は路地裏で怪しい動きをしていた少年ギャング団から銃で襲撃され、マーティンは自ら撃った弾丸で1人の少年を絶命させてしまいます。しかも、驚くべきことに、殺してしまった少年は、息子の友人ではありませんか。もちろん、正当防衛ですが、この出来事がマーティンの心に深い傷を負わせたのは言うまでもありません。息子に何と伝えればよいかわらず、家に帰らず酒に溺れる始末です。

 その後、ロジャーに説得され、家に帰ったマーティンを待ち受けていたのは、くだんの友人の葬儀に出席すべく、ヒゲを剃っている息子です。その覚束ない手付きを目にしたマーティンは、友人の死には触れず、まず正しいヒゲの剃り方を教えます。これまでほとんどできなかった、父親としての役割を果たそうとでもするかのように。こうした触れ合いを通して、だんだん息子に近づき、最終的に謝るマーティンに対し、息子は「悪いのは、あいつだ」と言葉少なに答えるのですが、これが前述したカミソリ傷の会話と響き合っていることは明らかでしょう。もはや何をしても傷がつかざるをえない老いた肌を持つマーティンが、正しい方法を使えば傷つくことはない若い肌を持つ息子に、それを伝授しているわけですから。いやはや美しいシーンです。

 その足で葬儀に参列したマーティンは、亡くなった少年の父親からこう言われます。「何かしたいなら、息子に銃を渡した者を捕まえたまえ」と。この言葉によって、マーティンは犯罪者に立ち向かう気持ちを新たにするのですが、興味深いのは、その後のシーンでロジャーもまた、ヒゲ剃りの傷について言及していることです。派手な立ち回りを演じて顔が傷だらけになった彼は、同僚が「また傷?」と問われ、「ヒゲ剃りでな」と答えるのです。もちろん、これは小洒落たジョークに過ぎません。しかし、これまでの文脈を総合すると、別の意味に聞こえてくる気もします。

 要するに、子供を傷つけるという意味では、ヒゲ剃り中のカミソリも犯罪者も同じなのです。そこから子供を守ること。その第一歩目として、カミソリの使い方を含む正しいスキンケアの方法を教えてあげること。それこそが大人の役目なのだと、『リーサル・ウェポン3』は言っているのではないでしょうか。それこそが、冒頭の問いへの答えに他なりません。実際、ラストでマーティンは引退を撤回し、定年退職まで子供たちの平和な暮らしを守ることを決意するのですから。



鍵和田 啓介 
1988年生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。


(この記事は2021/9/29にNewsletterで配信したものです)

 

 

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