LOGIC MAGAZINE Vol.11

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

NFTの登場で変わるアートシーン

先日、世界的なアートオークション、クリスティーズのオンラインセールで、Beepleというデジタルアーティストの作品が約6,935万ドル(約75億円)で落札された。この金額は現存アーティストのオークション記録として第3位という数字でもある。このニュースで驚くべき点としては、この作品がデジタルアートであり、なんと21,069×21,069pixelのJPGデータということである。

これまでデジタルデータは無限に複製可能であったゆえに、データ自体にアートとしての価値は存在しなかった。既存のアートにもリトグラフやプリントなどの複製手段はあったものの、原画が本来の価値を持っているのは周知の通り。今回の作品は「NFT(非代替性トークン・Non-Fungible Tokenの略)」という、デジタルに唯一無二の価値を与えることを実現したデジタル資産である。NFTは、ブロックチェーン上で発行や流通が可能なデジタルデータの一種であり、ビットコイン等の仮想通貨に近い。ひとつのデジタルデータに取引記録や所有権、真正性を証明できるユニークな識別IDを持ち、複製や改ざんが困難なブロックチェーン上に存在する。つまり、鑑定書と所有証明書のようなものがついたデジタルデータである。

さて、NFTの登場によってアートはどういうことができるようになっていくのか。まず言われているのが、アーティストへの再分配だ。現実世界のアートマーケットでは、アーティストは作品を誰かに売った1回しかお金が入らない。世の中でよくニュースになるアートオークションはセカンダリーマーケットといって、要は転売なので作品が100万になろうが1億になろうが作家には1円もはいらない。NFTに作品の二次利用の権利を付与すれば、転売される度にアーティスト自身にお金がはいるようにできる。そして、作り方・売り方にも新しい考えが生まれている。「プログラマブルアート」だ。プログラマブルアートとは、アーティストが自分のデジタル作品に編集可能な“レイヤー”に分解することで新しい価値を付加するムーブメントだ。例えば、描いた顔の角度を変えたり、色やテクスチャーを変えたりすることでさまざまな派生をつくり、売ることができる。

他にもブロックチェーンの技術を活かした新しい表現手段だったり、新しい販売方法、そして新しいスターもどんどん生まれてくるであろう。デジタルアートが誕生して60年余り。NFTの登場でアートシーンに革命が起きるのか、はたまた一過性のバブルで終わるのか、まだ分からない。ただ、今後目の離せないワクワクさせる一大トピックとなるには違いない。(佐々木智也)

参考文献:
・CNET Japan - 突然話題になったデジタル資産「NFT」とは何か--暗号資産との違いや注意点は(https://japan.cnet.com/article/35168406/)2021.3.27
・美術手帖 - BeepleのNFT作品が約75億円で落札。現存アーティストのオークション記録第3位に(https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/23726)2021.3.12
・Gigazine - デジタルな概念に唯一無二の価値を与える「非代替性トークン(NFT)」とは一体何なのか?(https://gigazine.net/news/20210213-non-fungible-token/)2021.2.13

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。

011
ポジウィル株式会社
金井芽衣氏

LOGIC MAGAZINE第11回インタビューにご登場いただくのは、ポジウィル株式会社の金井芽衣氏。キャリアのパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア)」を展開している同社は、ここ1〜2年で大幅に業績を伸ばしている。だが、その前段階では、主力事業のクローズや社員の退職増など、困難な場面も少なくなかったという。そうした波瀾万丈からの逆転劇はいかにして起きたのだろうか。金井氏に聞いた。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

どんなことがあってもキャリア・カウンセリングを社会に根付かせる。それが私の使命だから。

―いきなりこんなことを言うのもなんですが、2019年から2020年にかけてのポジウィルは浮き沈みが激しいように見受けられました。主力事業だったオンライン相談サービス「そうだんドットミー」のクローズがあったり、社員の退職が続いたりって。でも、ここ数ヶ月は安定しているというか、事業も社員数も段違いに伸びていますよね。

金井:あらゆる地雷を踏んできたなと思っていて。「そうだんドットミー」も投資家からは「伸びないんじゃない?」と言われ続けていたんですけど、私は伸びると信じていたんです。実際、6000人以上のユーザーに登録していただいていましたし。でも、ユーザーヒアリングを何度かしてみたら、単発の相談では根本的な問題の解決にはならないと考えるようになって。それで中長期的にユーザーと関わることができる「POSIWILL CAREER」に注力することにしたんです。社員が定着しないことに関しても、自分の能力を過信していたんですよね。どんな人でも私のもとにいたら勝手に成長すると思っていました。でも、そんなことはなくて。

―金井さんの下で働いていたら、人は勝手に育つと思っていた?

金井:そうです。そんなわけないのに。その事実と向き合うことになったときは自分の力のなさに打ちひしがれましたね。

―事業のピボットって痛みも伴いますよね。それでも決断できたのは何が大きかったのでしょうか?

金井:私は自分がつくったものに対する執着心がないんですよ。だから、ダメならダメで仕方ないと潔くやめることができたんだと思います。ただ、軸はずっと変わっていなくて。私は18歳の頃からキャリアカウンセリングをやりたいと考えていて、そのために最善な手段を選んできたつもりです。

 

衝突したとしても、本音で向き合いたい

―現在は社員数もどんどん増えていますが、仲間が増えていくことは金井さんにとってどういう感覚ですか?

金井:私は子どもを生んだ経験がないので同じ気持ちなのかはわからないですが、大事な存在が増えるってこんな感じなんだって思います。だからこそ、私は本気で向き合いたいし、言わなきゃいけないことは言った方がいいと考えていて。それが重荷だと感じる人がいるだろうことも想像できるのですが、それはそれで仕方がないことなのかなって割り切っています。

―金井さんはストレートな意見を誰にでも分け隔てなく言うタイプですよね。

金井:私、高校生の頃にチアリーディング部に在籍していたんですけど、そのときの経験が大きいのかなと思います。全国大会でも優勝するくらい高い実力を誇る部で、そこに入りたくて高校を選んだくらい憧れの場だったんです。でも、私が副部長を務めた代だけ予選で敗退してしまって。

―何か原因があったんですか?

金井:60名いる部員を幹部たちがマネジメントできなかったんですよね。わがままなことを言う人がいれば、恋愛関係がもつれる人もいたし、常に何かしらで揉めていました。だから、一体感みたいなものが全然なくて。今にして思えば、腹を割って話すことができなかったなって思うんです。

―だからこそ、言いたいことはちゃんと言うようにしているわけですね。

金井:そうですね。厳しいようですが、「私のスタンスはこれだから、合わないと感じるならほかに幸せな道があると思う」という話も去年していて。あと、去年の10月にサービスブランドとコーポレートブランドを一斉リニューアルしたんですけど、そのタイミングでスローガンをはじめ、ミッションやバリューを決めたんです。特にバリューで掲げた5つの行動指針には、私のなかでこれができていてほしいという希望を言語化していて。


金井:たとえばひとつ目の「ゴール思考でいこう。」は、短期的に考えたら正しいことでも、中長期的には違うってこともあるじゃないですか。そういうことはやりませんっていう意志表示になったし、ふたつ目の「自分から動こう。」も言葉にするのとしないのでは、社員の動き方も変わってくるんですよね。

―それによって組織にも変化はありましたか?

金井:男女ともに人生において何かを頑張ってきた経験のある人が増えましたね。そういう人って周りと比較しないことが多いと思っていて。地区大会で優勝しようと、県大会で優勝しようと、全国に行けなかったし、オリンピックに行けなかった。そういう焦燥感があるんですよ。こんなもんで満足している場合じゃないと思いながら仕事に取り組んでいるんですよ。だから、仕事でも圧倒的な実績がほしくてがむしゃらに頑張れるのかなって。

 

私にとって仕事は、生きる証

―事業も組織も伸びている状況下で、金井さん自身が課題としていることはありますか?

金井:今は“こんな感じ”という暗黙の了解で進めていたことが多いので、きちんと言語化しないといけないフェーズに入ったなと思っています。会社ができていないことって、つまりは私ができていないことじゃないですか。その整理ができたら、ポジウィルはもっと伸びるんじゃないかなって予想しています。

―そうすると、今は会社と向き合う時間が多そうですね。

金井:そうですね。とはいえ、ずっと向き合っている気がします。去年の今頃も悩んでいたし。私はなんで社長をやってるんだろうって思いましたし。

―そこで踏みとどまれたのは何が大きかったんですか?

金井:ユーザーさんの声ですね。こんなに優秀な人たちが悩んで生きているのはもったいないなって思ったんです。あとはNetflixで視聴したビル・ゲイツのドキュメンタリー。あの人って世界でもトップクラスに人脈と知識とお金を持っているわけですけど、それを私利私欲を肥やすためではなく、地球の課題を解決するために費やしているんですよね。それで私も「何のために生きているんだろう?」って考えてみたら、ポジウィルで取り組んでいることが理由なんだと思えて。

―仕事に取り組むこと=自分が生きている存在証明だと。

金井:でも、毎日のように恐怖と戦ってますけどね(笑)。

―何が怖いんですか?

金井:何もかもが。うまくいっても怖いし、うまくいかなくても怖い。ただ、まだまだ理想とはほど遠いことはわかっているので、もっと頑張らないといけないなと思っています。この仕事が私の人生におけるミッションだから。

______________

 

金井芽衣さんのパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「寝る・食べる・運動する」

去年の夏に眠れない日々が続いたことがあって、それから「寝る・食べる・運動する」を意識するようになりました。特に眠りには気を遣っていて、家に帰ってからの行動のほとんどがルーティーンになっています。手を洗って、お風呂のお湯を入れて、化粧を落として、お風呂にスマホを持って1時間半ほど半身浴。入浴剤にはクナイプのグーテナハトシリーズを使っています。お風呂を出てからはパックをして、マッサージとストレッチをして、余裕があったら読書をして、「スリープマイスター」というアプリをつけてから就寝します。これがすごいよくて、睡眠のパロメーターが測れるだけでなく、レム睡眠からノンレム睡眠に切り替わる眠りの浅いタイミングでアラームを鳴らしてくれるので、すっきりと起きることができるんです。

 

金井芽衣さんのおすすめのワークツール

「スケッチブック」

頭に浮かんだ言葉をスケッチブックに書くようにしています。そうすると、現実化する気がして。パソコンは「書く」というより「打つ」という感覚があって、なんか違うんですよね。手を使って文字を書く方が脳と直結する感じがして良いんです。

LOGIC | CULTURE

教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。


「スキンケア映画学」第4回

『荒野の決闘』

 舞台は西部開拓時代の荒野。ワイアット・アープとその3人の弟は、牛の群れを運びながらカリフォルニアを目指していました。旅路の途中、近くにトゥームストンなる街があると知ったワイアットは、立ち寄ってみることにします。興味深いのは、その目的が髭剃りだということ。長旅で口のまわりにたっぷり茂った髭を理容室で剃りたい一心で、末弟ジェームスを牛の見張りとして残し、一行はトゥームストンに足を踏み入れるのでした。

 しかしながら、ことは上手く運びません。理容室の椅子に座った瞬間、泥酔した無法者の銃撃に遭遇したからです。命惜しさにその場でバッジを返納した保安官に代わり、無法者をこらしめるのはワイアットです。その腕っぷしを見込んだ市長は「ぜひうちの保安官になってほしい」と懇願しますが、彼はにべなく断ります。いわく「髭剃りに寄っただけだ」と。かくして念願叶って理容室で髭を整えたワイアット一行は街を後にしますが、野営地に戻ってみれば、牛の群れは姿を消し、おまけにジェームスは射殺されているではないですか。これに憤慨したワイアットは、トゥームストンへと踵を返し、保安官の任務を引き受けるのでした。

 実在した保安官ワイアット・アープの活躍を描く『荒野の決闘』は、そのようにして幕を開けるのですが、“活躍”の部分には今は立ち入りません。注目したいのは、ワイアットの身だしなみへの並々ならぬこだわりようです。そもそも荒野に生きる男ならば、どれだけ髭が生えても気にしなさそうですし、気になったとしても自分で剃る方法はいくらでも考えつきそうなものです(偏見でしょうか?)。にもかかわらず、命の危機に直面してもなお理容室での髭剃りに執着するあたり、かなりの洒落者であるらしい。この感触がほとんど確信に変わるのは、映画の中盤。なんとワイアットは、再び理容室の椅子に腰を下ろすのです。

 ある日曜日のこと。髭剃りと整髪を終えたワイアットは、困惑した表情を浮かべています。理容室の店主から「これが都会的なスタイルだ」と言わんばかりにゴリ押しされ、整髪料でベタベタの七三分けにされた上、さらには香水まで振りかけられてしまったからです。店を出てしばらくは、道行く人に「なんかいい香りがするなぁ」と声をかけられ、「俺だよ!」と恥ずかしげに答えるという漫才みたいなやりとりが続くのですが、この“香水事件”はワイアットにとって悪いことばかりではなかったかようです。その香りが引き金となり、意中の女性であるクレメンタインに教会へのデートに誘われるのですから。しかし、こうした一連のシーンから読み取るべきは、身だしなみをきちんとしてれば、女性からモテるとかそんなことだけではなさそうです。

 『荒野のオデュッセイア 西部劇映画論』の川本徹は、西部劇で男性の入浴シーンがよく描かれてきたことについて、こんな指摘をしています。一般的に西部劇のヒーローは、荒野と文明というふたつの空間を行き交う人物であり、荒野は男性的な空間、文明は女性的な空間と位置づけられてきましたが、過剰な男らしさは文明社会には似つかわしくないのであって、西部劇のヒーローが文明に入るためには、荒野という男性空間で過ごした痕跡を洗い流し、体を文明ないし女性性に近づける必要がある、と。そのための手段が入浴だというのです。

 本作のワイアットは入浴こそしません(面白いのは、理容室の店主が「風呂もあります」と言うシーン。この時代の理容室には入浴サービスがあったのかもしれません)。しかしながら、彼にとって理容室で身だしなみを整えることは、知らず知らずのうちに、荒野という男性空間で過ごした痕跡を洗い流し、体を文明ないし女性性に近づける手段だったと考えることは可能でしょう。香水なんかはまさに女性的なアイテムに他なりませんし、それが結果的に文明の真骨頂であるところの教会へのデートへと導くのですから。カジュアルに言い直せば、男が文明人として生きるなら、身だしなみを整えることが必要だということでしょうか。

 文明社会で暮らす現代日本のビジネスマンが、荒野と文明の間を行き交うことはおそらくないでしょう。したがって、髭剃りや整髪をやらないという選択肢はほとんどありません。ワンランク上の文明人を目指すなら、ワイアット以上の身だしなみへのこだわりが必要になるのです。例えばそれは、入念なスキンケアかもしれません。これまでスキンケアといえば女性的な行為と思われてきましたが、上記の論からすれば、だからこそするべきだと言えるでしょう。



鍵和田 啓介 
1988年生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。


(この記事は2021/4/23にNewsletterで配信したものです)

 

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