LOGIC MAGAZINE Vol.13

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 

未来の食料危機を救う「昆虫食」の今

世界中でSDGsの波が拡がる中、来たる未来への食料不足の救世主として、近年「昆虫食」が注目されている。市場規模も日本能率協会総合研究所の調べによると、2019年の70億円に対し2025年には1,000億程度に拡大する見通しだ。実際に日本でも、昆虫食のスタートアップが続々と誕生していたり、昨年5月には無印良品がコオロギのパウダーを使った「コオロギせんべい」を発売し、数日で完売するなど、注目を集め始めている。

これだけ注目される昆虫食、特筆すべきはやはり栄養価の高さと環境負荷の軽さである。まず、栄養価でいうと、100gあたりのたんぱく質が、牛肉21.2gに対し、コオロギは約3倍の60gにもなる。そして環境負荷を見てみよう。これはFAO(国際連合食糧農業機関)の報告書にある、たんぱく質1kgを生産する際の数値だが、エサの必要量は牛10kgに対しコオロギは1,7kg、水の必要量は牛22,000ℓに対し、なんとコオロギはその0,00018%の4ℓである。細かい話はとにかく、驚愕の数字であることには間違いない。

一方で、頭では理解できても、やはり生理的な問題はある。これまでの伝統食的な先入観として虫の形のまま食べるイメージがあるが、最近そうでもなくなってきているようだ。例えば粉末状のもの、プロテインバー、スナック菓子、パンなど原型をとどめない加工食品が増えており、昆虫への抵抗感もかなり解消されつつある。

急激な世界人口の増加で2030年にはたんぱく質の供給が間に合わなくなると予想されている。もちろんサステナビリティの重要課題ではあるが、食文化という文脈でもこれまでの数百年、もっと言うと数十年もの間、我々が食べ物として認識していなかったけど今では当たり前のように食べているものはたくさん存在する。世界中の食品メーカーやシェフがおいしい昆虫食を目指して切磋琢磨する時代がくれば、グルメとして“昆虫”を選択する時代もそう遠くないのではないだろうか。これから先、昆虫食にはぜひ注目していきたいところだ。(佐々木智也)

参考文献:
日本能率協会総合研究所『MDB Digital Search 世界の昆虫食市場規模・予測』(2020)
国連食糧農業機関『食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書』(2013)
無印良品『コオロギが 地球を救う?』(2020)(https://www.muji.com/jp/ja/feature/food/460936)

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。

013
株式会社オールユアーズ
木村昌史氏

LOGIC MAGAZINE第13回インタビューでは、「"UnFashion"としての服」を掲げるファッションブランドALL YOURSの木村昌史氏を訪ねた。新型コロナウイルスは、私たちの生活に大きな変化をもたらしたが、そのなかでも特に大きな影響を受けたのがファッションだろう。木村氏は何を考えながらコロナ禍を過ごしていたのだろうか。ALL YOURSの現在地を探る。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上)

 

僕たちのALL YOURSから、
みんなのALL YOURSへ

ーこの1年で服の在り方が一気に変わりましたよね。個人的にも買う頻度は減っているし、着心地の良さや普段使いの良さを求める方向にシフトしている気がします。ALL YOURSは以前から着心地や普段使いにこだわって服づくりをしていましたが、時代のニーズとマッチしてきた実感はあるのでしょうか?

木村:この1年でよく言われたのが「ALL YOURSの部屋着があったら買います」って言葉だったんですよ。でも、そもそもALL YOURSには部屋着という概念がなくて。どこで着てもらってもいいから。部屋着と外着ってトレードオフの関係になっているんですよね。部屋着は着心地はいいけど、型崩れしやすい。一方の外着は型崩れしにくいけど、着心地はあんまりよくないって。ただ、私たちは研ぎ澄まされた汎用品はいろんなことに使えると考えて、とにかく機能性を追究して服をつくってきました。

ーでも、最近は機能性の良さを売りにした服も増えましたよね。

木村:そうそう。ファッション業界が少しずつ私たちの方に寄ってくるようになってきて。ALL YOURSをはじめた頃は「服に機能性を求めるなんてカッコ悪い」って言われていたんですけどね。それってスポーツウェアじゃんって。あと、クラウドファンディングを使って服を売るのもダサいって言われていました。でも、今ではどちらも珍しいものではなくなってしまったので、そこで勝負するのもどうなんだろうと考えるようになったんです。大手と競い合うだけの体力もないですし。

ーそうすると、自分たちのアイデンティティを一時的に見失っていたわけですね。

木村:それもあって、自分たちがやりたいことをやろうと良い意味で開き直ったというか。あと、組織体制についても見直すことにしたんです。創業期は私たち経営者が会社を引っ張って、スタッフはアシスタント的な役割を担いがちでした。でも、トップダウンでこれやれ! あれやれ! って言われる会社で自分が働きたいかと考えたら、全然そんなことないことに気づいて。それで「自分がやりたいと思うことを仕事にしましょう」と伝えて、私たちの承認を取らなくてもいいようにしました。それよりも、自分が面白いと思ったことをいち早くお客さんに出せるようにしてくれって。

ーそれってすごく勇気がいることですよね。

木村:そもそも私たち、決めることが苦手なんですよ(笑)。それに事業責任者が決めたことが必ずしも正しいとは言えないじゃないですか。だから、私たちの承認を取らなくても事業を進めていく方がいいんです。その代わり、うちにいるメンバーのうち最低でも3人から承認をもらうルールを設けています。

 ALL YOURSの店内

 

“YOURS”の拡張によって生まれる新しい風

ー木村さんや(代表取締役の)原さんが引っ張ってきたALL YOURSが、みんなのALL YOURSになっている過渡期というわけですよね。

木村:そうですね。YOURSの部分がどんどん拡張しているというか。これまではお客さんのことを共犯者と呼んでいたのですが、今はALL YOURSに関わってくれるすべての人たちを共犯者だと考えていて。だから、デザイナーの名前を冠したブランドとは考え方が違うんですよね。本当にみんなで服をつくっているイメージです。しかもマーケットを分析して商品をつくっているわけではないから、ロジックとかもないですし、こうすれば成功するよねっていうモデルもなくて。でも、 “自分たちがやりたいことをやる”ってそういうことだと思うんですよね。いかに熱量をクリエイティブに変換しながら取り組めるかっていう。

ーとはいえ、理想だけでは生きていけない事実もありますよね。それは実際のところどうなのでしょうか?

木村:実は2021年の3月がここ2年くらいでいちばん良い数字が出てるんですよ。

ーそれはすごいですね!

木村:みんな、めちゃくちゃ考えて行動してくれるんです。たとえば、うちのセットアップって税抜きで3万5000円するんですね。これをワンセット売るために10%OFFにしたら、3500円マイナスが出るじゃないですか。そういうことはしたくないって言うんです。それなら定価で売って、さらに3500円分喜んでもらえることがしたいよねって。すごいですよ、本当に。

ーそういうメンバーに囲まれるなかで、木村さん自身はこれから取り組んでいきたいことはあるんですか?

木村:ALL YOURSの服が着たくても着れない人をゼロにしたいと思っています。うちの商品ってメンズ・ウィメンズみたいな表記をしていないんですね。具体的には10サイズで展開しています。それを13サイズにしたいなと。

ALL YOURSならではの多彩なサイズ展開

 

ーそれはどういう意図があるのでしょうか?

木村:自分は18歳からアパレルの販売員をやっているのですが、その頃からS・M・Lのサイズから弾かれる人が一定数いることに疑問を感じていて。そこには品番数を多くするとサイズを増やせないという産業構造的な問題があるのですが、幸いなことにALL YOURSは新商品を出すこともそこまで多くないので、サイズを増やしてしまった方がコミュニケーションを深められるんじゃないかなと思ったんです。

ー話を聞いていて、すごくALL YOURSらしいやり方だと思いました。

木村:結局のところ、私たちは誰もやっていないことがやりたいんですよね。最近は、カスタムメイドでインクルーシブファッション(※障がいの有無、年齢、ジェンダー、体型などに関わらず、すべての人が着られる服づくりを目指すファッション)を実現しているブランドがぽつぽつ出てきているけれど、既製品で実現しているところって私たちの知るかぎりでは見たことないから、ALL YOURSで取り組むべきだなと思ったんです。それに、そういう服の在り方を探求していくのが、なんだか自分たちらしい気がするんですよね。

 

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木村昌史さんのパフォーマンスアップのためのルーティーン 

「ストレッチ」

コロナ禍で日課になっているのが毎日5分のストレッチです。プロスポーツのフィジカルトレーナーをしている知人から「股関節と肩甲骨が柔らかければ、特に運動しなくても健康に過ごせますよ」と聞き、もう1年くらい実践しています。といっても、深呼吸をしながら伸脚をするのと、肩をぐるぐる回すだけなんですが(笑)。でも、ストレッチを怠った日はあんまり調子が良くなくて。仕事をするようになってから歩いているとき以外に動くことってほとんどないし、デスクワークだとほぼ同じ体制で1日を過ごすことになるじゃないですか。固まった身体をほぐすのにおすすめです。

 

木村昌史さんのおすすめのワークツール

「SONYのノイズキャンセリングヘッドフォン」

一人で集中したいとき、周囲の雑音を排除するためにノイズキャンセリングヘッドフォンを付けて仕事をしています。以前はスタジオ用のものをカッコつけて使っていたんですけれど、ノイズキャンセリングが付いていないのがネックでした。それでいくつか試してみて辿り着いたのが、このSONY製。値段も手頃だし、家電量販店で購入できるし、1年に1度の頻度で新製品が発売されるので、すごく気に入っています。1日のうち半分くらいの時間は付けていますね。

 

LOGIC | CULTURE

教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。


「スキンケア映画学」第5回

『北北西に進路を取れ』

 ハリウッド史上、もっともスタイリッシュな俳優は誰だと思いますか? いろいろな意見があるでしょうが、個人的に推薦したいのはケーリー・グラントです。1930年代から50年代、つまりハリウッドの黄金期と呼ばれる時代に活躍した名優ですね。甘いマスクと渋い声、英国製スーツを見事に着こなすすらりとした長身、コメディからシリアスまで品よく演じられる身のこなし……これほどハンサムという言葉が似合う俳優もなかなかいません。この連載の1回目で紹介した『007』のジェームズ・ボンドは、グランドを参照しながら造形されたなんて話もあるくらいです。要するに、スタイリッシュな男を目指すなら、グランドの立ち居振る舞いにこそ学ぶべきだと言っても過言ではないのです。

 では、どの作品のグランドに学ぶのがいいでしょうか。お薦めは、サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督による『北北西に進路を取れ』です。ヒッチコックはグラントのことを「私が唯一愛した男だ」と絶賛したそうですが、本作を観ればその惚れ込みようが理解できます。実際、あらゆる手を尽くして、グランドをひたすらかっこよく描くためだけに撮られたような作品なのですから。以下、具体的に見てみましょう。

 まずは、その振る舞いから。本作でグランドが演じるのは、広告代理店の重役を務める伊達男、ロジャー・ソーンヒルです。ある日のこと、バーで仲間と一杯やろうとホテルを訪れた彼は、穏やかじゃない雰囲気の男たちに拉致されます。こんな危険極まりない状況下においても、まったく取り乱さないどころか、ジョークまで言ってのけるのがまずかっこいい。

 その後、立派なお屋敷に連れ込まれたソーンヒルは、どうやら自分が男たちの組織にスパイと間違われていることを理解します。しかし、どれだけ抗弁しても信じてくれません。大量の酒を無理やり飲まされてぐでんぐでんにされた末、エンジンのかかった車の運転席に押し込まれ、事故に見せかけて殺されそうになるソーンヒル。しかし、ここでも間一髪で意識を取り戻すんだから、さすがと言うしかありません。

 以降、ソーンヒルは自分の身にふりかかかった不可解な出来事の真相を突き止めるべく、いろいろと動き回る中で、巨大な陰謀に巻き込まれていきます。最初、彼は自身の母親と行動をともにするのですが、いつも母に対してレディーファーストを怠らないあたりは、もはやハンサムを通り越して笑えてきます。こんなふうに、どんな状況にあってもユーモアとジェントリーを忘れない男として、ソーンヒルは描かれているのです。

 彼のスタイリッシュさは、劇中に登場する人物の発言によっても嫌というほど強調されます。敵でも味方でも、彼を一目見れば「洗練されている」「顔がいい」と口にし、衣服についても「仕立てのいいスーツを着ているな」「服のセンスがいいな」と褒め称えるのですから。実際、彼が劇中のほとんどのシーンで纏っているスーツは、ヒッチコックがグランド自身に選ばせたもので、サヴィル・ロウのテーラーに発注したものらしいですから、登場人物たちの評価に間違いはないわけですが。

 しかし、もっともソーンヒル=グランドのスタイリッシュさが炸裂するのは、作品中盤に登場するあるシーンです。彼は警察や追手から逃げつつ、とある人物に会うために特急列車に乗り込み、そこで見目麗しい美女のイブと出会います。彼女にかくまってもらったソーンヒルは、目的地に到着した際も、イブの荷物を持つ乗務員を装って追っ手の包囲網をかいくぐることに成功します。問題はその次のシーン。なぜか彼はトイレにいるのです。しかし、用をたすわけではありません。イブの客室で発見した女性用の小さなカミソリで、なんとヒゲを剃り始めるのです!

 たとえ長いこと家に帰ってないとはいえ、逃亡中の身です。捕らえられたら命の保証はないそんな状況下ですし、ヒゲで印象が変わるなら変装に使えるという見方もできるでしょう。しかし、そんな一般論はここでは通用しません。なぜなら、グランドはスタイリッシュな男なのだから。ヒゲ剃りだけに限らず、スキンケアも含めてもいいでしょうが、どんな状況下であっても、身だしなみを整えずにはいられない。それこそが真のスタイリッシュの男なのです。本作のグランドから学ぶべきは、そんな姿勢でしょう。あなたには真似できますか?



鍵和田 啓介 
1988年生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。


(この記事は2021/5/28にNewsletterで配信したものです)

 

 

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