LOGIC MAGAZINE Vol.31

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今、読者の皆さんと一緒に考えたいと感じた
ホットなトピック

 


LOGICはおかげさまで3周年を迎えました。


いつもLOGICをご愛顧、そして応援ありがとうございます。お陰様でLOGICは、8月で3周年を迎えることになりました。心から厚く御礼申し上げます。

今年は、予定より時間がかかってしまいましたが、バージョン2.0をリリースいたしました。原料高騰や物価上昇のなか、ユーザーの皆様の期待に応えるべく、価格の見直し、容量の増加などを決断させていただきました。より、お求めやすくなった新しいLOGICで、引き続きパフォーマンスアップをお楽しみいただければ幸いです。

また、LOGICをよりお楽しみいただける新しいコンテンツやコラボレーションを年内に展開する予定ですので、どうかご期待ください。

今後も、変わらず忙しく働く人のパフォーマンス向上につながる価値を提供し続けていく所存です。

引き続きLOGICのご愛顧の程宜しくお願い申し上げます。

LOGIC代表 佐々木智也

 

 

LOGIC | PEOPLE

第一線で活躍するプロフェッショナルの体験や知見から
パフォーマンスアップにつながるヒントを学ぶ。
 



031
株式会社PETOKOTO
大久保泰介氏

LOGIC MAGAZINE第31回インタビューにご登場いただくのは、株式会社PETOKOTOの大久保泰介氏です。「ペットを家族として愛せる世界へ。」をミッションに、複数の事業を運営する大久保氏に、自身を奮い立たせる「夢中」について伺います。(聞き手:LOGIC MAGAZINE編集部 佐々木、村上 執筆:あにぃ) 

 

愛犬を通して知った
ライフロス問題を解決するために

て保存料無添加のフレッシュペットフードを提供する「PETOKOTO FOODS」と異なる3つの事業を手がけていますよね。何が大久保さんの原動力になっているのでしょうか?

大久保:愛犬の存在ですね。彼は、足が少し内股という理由だけでペットショップに卸されず、行き場を失っていた保護犬でした。そうやってちょっとした問題で捨てられるペットがたくさんいるんですよ。サステナブルやロス問題が取り沙汰されるこの世の中で、一番に解決する必要があるのは、命が軽く扱われるライフロス問題なんじゃないかと思ったんです。

—そこまで愛犬が欠かせない存在になっているのは何が大きいんですか?

大久保:これはメディアでもよく話していることなのですが、僕は起業する3年前までペットが苦手でした。小さな頃、親がペットを飼うことに好意的ではなかったので、その影響が大人になってからも続いていたんです。でも、付き合っていた女性が犬を飼っていたという安直な理由で大好きに切り替わってしまって(笑)。

 

「輪の外」も意識して。動物が苦手な人への配慮も大切に

—かつての大久保さんのように、理由もなく動物に苦手意識を持っている人は割といる気がします。

大久保:本当に多いですよ。だから、PETOKOTOでは「輪の外も想像しよう」という行動指針を立てていて。これは他のペット企業ではなかなか出てこないワードなんじゃないかなと思います。もともとペットが嫌いだった僕ならではというか。

—「輪の外」は具体的にいうと、どういうことなんですか?

大久保:たとえば、僕は愛犬と登山やキャンプに行くのが好きなんですが、一歩でも家の外に出れば犬が苦手な方もいます。飼い主はそういうことも想像し、きちんとマナーを守らないといけません。一方で犬が苦手な方にも、ひとつの命として存在を受け入れてほしい。そんな持ちつ持たれつの関係性を築くことが重要だと思うんです。

—確かに、お互いが歩み寄ることは大切ですよね。

大久保:とはいえ、数年前と比較したら風向きは大分変わってきていて。以前なら「OMUSUBI」のことをメディアに取り上げてほしいと思っていても、炎上するリスクがあるということで、相手にされないこともありました。でも現在は、ペット系の番組に保護犬猫の話題が必ずといっていいほど出てきます。また、PETOKOTOでも2022年にJR 東日本スタートアップと協働で日本初となる「ペット専用新幹線」の実証実験を行いました。そのときは、ペットが苦手な方の不快感・アレルギーの不安要素など課題の抽出を行ったうえで対策を講じたのですが、そうやってペットがNGな理由を可視化することで、お互いが歩み寄っていけるようなアプローチを続けていきたいと考えています。

 

ペットと健康で幸せな一生を過ごしてもらうために

—異なる3つの事業を運営していくうえで気をつけていることはありますか?

大久保:いかにサービスを循環させるかに注力しています。会社の利益を伸ばすことを考えたら、本当はフレッシュペットフード事業に絞る方が効率はいいんですよ。でも、僕たちが実現したい世界はペットを家族として迎え入れて、健康で幸せな一生を送ってもらうことにあります。そのための入口として「OMUSUBI」で保護犬猫を受け入れられるようにして、その後に「PETOKOTO MEDIA」で情報を得たり、「PETOKOTO FOODS」で質の高い食事を提供できる仕組みを構築したんです。また、「PETOKOTO FOODS」の売上の一部を「OMUSUBI」に登録する保護団体へ寄付しています。お客さまのなかには、保護犬猫を実際に迎えるのは難しいけれど、力になりたいという方も多いので。「お客さまは僕らの事業方針に賛同してくださる仲間」というスタンスで、一緒にコミュニティをつくることを意識しています。

—創業した時点でどのあたりまで構想していましたか?

大久保:当初からペットのためのプラットフォームをつくりたいと考えていて、マッチングサービスもメディアもフレッシュペットフードもやりたいと考えていました。ただ、当時は資金調達もなかなかうまくいかなくて。だから、タイミングは想定とは違いますね。フレッシュペットフードに至っては、5年かけてようやく形になりましたから。


リブランディングをきっかけに次のステージへ

—では、今後についてはどれくらいまで考えていますか?

大久保:ペットのクリニックや保険事業分野にも手を広げたいと考えています。それも、動物病院の待ち時間が長いことや、自由診療の料金制ゆえに不透明なこと、さらに病院によって診療料金が異なることなど、愛犬の健康や幸せをつくるうえで感じた疑問がもとになっているんですよね。また、対面によるコミュニケーションにも力を入れていきたいと考えています。つい先日もリアルイベントを開催したのですが、「PETOKOTOのメンバーと会って話したことで、信頼度がより上がってファンになった」と言ってくださる方もいて。メンバーやお客さまと一緒に事業を発展させつつ、保護団体や旅行業者といったステークホルダーともつながっていけば、理想に近づけるのではないかと期待しています。

—次のフェーズに進むために現在は、どのようなことに取り組んでいるのでしょうか?

大久保:まず2022年にリブランディングを実施しました。事業が複雑化したことで、組織の進むべき道が不明瞭になっていると感じたんですね。また、新しいメンバーが増えてきて、新しい価値観と古い価値観が融合しきれていないような印象もあったので。それがうまくいったので、現在は「原点回帰」をテーマに自分たちの足元を固める施策に取り組んでいます。

—PETOKOTOにとっては、新たなスタートを切るための助走をしているような感覚もあるのでしょうか。

大久保:まさに今は助走している最中です。これからは、さらにスピードを上げていくタイミングだと思うので、そのためのギアを一段上げていきたいなと考えています。そのためのリブランディングでもありますし。今期で準備をしっかりして、来季は幸先のいいスタートを切れるようにしたいですね。

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大久保泰介さんのパフォーマンスアップのためのルーティーン


「入浴剤を調合し入浴」

絶景温泉が大好きなのですが、自宅でも入浴剤を自分好みにカスタマイズしてお風呂に入っています。いろいろな種類の入浴剤を大量にストックしているので、妻にはたまに怒られますが……(笑)。

 

大久保泰介さんのおすすめのワークツール


「CBD(カンナビジオール)」

メンタルケアのために、仕事終わりや寝る前に電子タバコタイプのCBDを吸っています。もともと喫煙の習慣はなかったのですが、試しに使ってみたらけっこう落ち着くのでハマってしまいました。

「Mr.Children」

仕事の合間にMr.ChildrenのライブDVDを観て気分転換しています。「この順番で聴く」というルールも自分のなかで決まっていて、ここぞというときに聴くとモチベーションが上がるんですよ。

 

 

LOGIC | CULTURE

教養としてのカルチャーを楽しみながら学ぶ。


「ビジネス映画学」第7回

『雨に唄えば』

 時代が変わる。一聴するに、ワクワクする響きの言葉ではあります。しかし、ビジネスにおいては、悠長に構えてばかりもいられません。現在の自動車業界に目を向けてみれば明らかでしょう。時代の新たな要請を受け、「CASE」(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electrifiedの略)をキーワードにした大変革の風に晒されているからです。このような時代の変化をどう乗り切るべきでしょうか。今回は、名作ミュージカル映画『雨に唄えば』を通して考えてみたいと思います。

『雨に唄えば』の舞台は、1920年代後半のハリウッド。主人公はサイレント映画のスター、ドンです。冒頭の回想によれば、彼が芸能のキャリアをスタートさせたのは、ボードヴィル芸人としてでした。その後、音楽に秀でた相方コズモと、憧れの映画界に潜り込んだ彼は、スタントマンとしての下積み期間中、出演者になるチャンスをゲット。見事ものにし、現在の揺るぎない地位を確立したようです。スター女優リナから一方的に恋仲だと思われていますが、ドンにその気はまるでありません。むしろ、ひょんなことから出会った才能豊かな新米女優キャシーに想いを寄せ始めています。

 そんななか迎えた1927年、映画界に激震が走ります。世界初の音声映画『ジャズ・シンガー』が公開され、大成功を収めてしまったからです。噂には聞いていたけれど、まさかそんなイロモノが成功するとは思っていなかった映画関係者はうろたえるしかありません。文字通り、一夜にして時代が変わってしまったわけです。

 とにかく音声映画を作らなくてはと、ドンたちも動き始めることになりますが、問題は山積みです。ドンたちは声を出す演技をゼロから勉強しなければなりませんし、撮影現場も初めてのことだらけで大わらわ。首尾よくクリアしながら何とか撮影は終了したものの、ひとつだけどうしようもならなかったのが、リナの悪声です。そのせいもあり、関係者向けの試写会は大不評を買ってしまうのでした。

 「ミュージカルにしたらどう?」。俳優としてのキャリアの終わりを自覚して落ち込むドンに、コズモとキャシーは提案します。要するに、映像素材はそのままに、音声だけ差し替えてミュージカル映画にしてしまえばいいというわけです。前述の通り、ボードヴィル芸人出身であり、歌であれば自信があるドンは、そのアイデアに可能性を感じて即採用。音楽はコズモが、リナの演技と歌の吹き替えはキャシーが担当することになり、急ピッチで作業は進められ、無事完成。結果、観客からも万雷の拍手を持って迎え入れられ、映画は幕引きとなります。

 時代が変わったとして、その変化に乗り遅れてしまったのなら、先を行く者たちの猿真似をしてもどこかで必ずやボロが出ます。しかし、だからと言ってボロをだましだましフォローするだけではその場しのぎにしかなりません。ボロを補って余りある、変化にふさわしいオリジナリティを付与する必要があるのです。『雨に唄えば』に即して言えば、演技力不足というボロがあり、それを補うための音声映画にふさわしいミュージカル化というのが、オリジナリティに当たるわけです。

 しかも、『雨に唄えば』は、そのオリジナリティが自分の足元に転がっているかもしれないとも示唆しています。スター俳優になってしまったため、ドン自身ですら忘れかけていましたが、ボードヴィル芸人出身の彼にとって歌は得意分野だったのですから。もちろん、それはサイレントの俳優としてダンが築いてきた地位をかなぐり捨てることではあるでしょう。しかし、時代の変化を乗り切るためには、そのくらいの大胆さが必要なのではないでしょうか。

 興味深いことに、制作の裏側に目をやると、『雨に唄えば』という映画自体がその大胆さを受け入れた作品でもあるようです。ドン役のジーン・ケリーは、キャシー役に新人女優のデビー・レイノルズが起用されると知り、プロデューサーのルイス・B・メイヤーに「それで彼女にはどんな実績があるんですか?」と怪訝な顔で聞いたといいます。対するメイヤーの言葉は、あらゆるビジネスマンが心に刻んでおくべきでしょう。

「何をしたかじゃない。これからが大事なんだ。我々はこの子をスターにしたいんだ」

 

鍵和田 啓介
1988年生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。

(この記事は2023/09/19にNewsletterで配信したものです)

 

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